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挑戦する心と高い志                                            福島県立福島西高等学校


記事の概要

 福島県立福島西高等学校は「知性」「特性」「健康」を校訓とし、「挑戦する心」を持ちながら社会に貢献できる生徒の育成を目指しています。そのため、普通科、デザイン科の特色を生かし、未来を夢見る雰囲気づくりや互いに磨き合う集団づくりなど、規則だけでは生み出せない環境を大事にしています。そして、生徒の進路希望実現に向け、授業第一の考え方を中心とした基礎学力向上に努めるとともに、生徒一人ひとりの「志を高める」教育を推進しています。
 本校の教育活動の中からデザイン科学科の学習と家庭クラブの活動について紹介します。

1 デザイン科学科の学習

 デザイン科学科は、美術・デザインについて深く学ぶことができる県立高校唯一の専門学科です。1学年1クラス(40名)で、1年次にはクラス全員共通に美術・デザインの基礎を学び、2年次からは個々の希望に合わせてFA(ファインアート)、VD(ビジュアルデザイン)、MA(メディアアート)の3つのコースに分かれ、2年・3年と美術・デザインの専門的な学習を深め、美術系大学への進学を目指します。
 一般の高校普通科では、芸術(音・美・書・工から1科目選択)科目は週2時間の授業であるのに対して、本校デザイン科学科では週6~10時間の専門科目の授業が設定されています。

FA(ファインアート)コース

 絵画(油彩・水彩・日本画)・彫刻などの作品制作を通して表現する楽しさと深さを学んでいます。仲間とともに学ぶことで刺激し合い、多様な表現や相互の価値を認めながら、独自の表現を追求しています。

VD(ビジュアルデザイン)コース

 デザインについて専門的に学び、作品やアイデアについてのプレゼンを通して「人に伝える」力を磨きます。黒板アートやプロジェクトなどの共同制作、小・中学校や企業とのコラボも多数実践しています。

MA(メディアアート)コース

 パソコン(Mac)やデジタルカメラなどのデジタル機器の基本的な使い方から多様な表現技法まで学び、CG やアニメーション、映像などを制作しています。多領域で活躍できる高い実践力を養います。


【作品・成果発表】

 高校3年間の集大成「卒業制作展」(12月)、1・2年生の「西高展」(2月)、「クラス展」(3月)を企画し、見る側の視点に立って見やすく効果的な展示方法を工夫しながら発表する楽しさを学んでいます。また、福島県総合美術展覧会(県展)、福島県美術協会展、福島県高等学校美術展などの公募展やデザインコンクールなどにも多数出品し、レベルアップを図っています。



【地域貢献・企業との連携活動】

 VD・MAコースを中心に福島県、地域の小・中学校、支援学校、消防署、警察署、企業などと、ポスター、壁画、黒板アート、パッケージデザインやイベントのサポートなどの連携活動に取り組んでいます。

【進路実現に向けての活動】

 デザイン科学科の生徒のほとんどが美術大学への進学を希望しています。美大入試の内容は大学・学部・学科によって様々です。個々の生徒の大学卒業後の将来を見据えた進路希望の実現に向けて様々な活動に取り組んでいます。


「一日大学」「美大進学親子勉強会」

 美術大学や美術予備校から講師を招聘し、大学入試や大学の講義体験、大学の特色、学生生活についての説明や大学卒業後の進路に関する講話を聴講し、進路について考える機会にしています。


「実技講習会」00

 福島西高校OBOGや関東圏の美術予備校から講師を招聘し、大学入試の実技試験対策として領域別の課題に集中して取り組みます。完成後にはレベルアップにつながるように作品講評会を実施しています。

「大学見学会」
美術大学見学やオープンキャンパス、卒業制作展などに積極的に参加・見学することで自分の目で直に見ることで進路意識の向上につなげています。
「実技課外」「美大学科模試」
進路実現に向けて夏休みや冬休みなどにもスキルアップのための実技課外を行っています。また実技だけでなく、美大受験に必要な学科対策試験も計画的に実施しています。

「美術部」
デザイン科学科は全員「美術部」に加入するため、美術部員が100名以上います。火曜日、日曜日の2日以外は課題に取り組み、各々の表現を深め、技能を高めあえる貴重な時間になっています。

2 家庭クラブの活動

 家庭クラブは、家庭科の学習を生かして、校内や地域生活の充実・向上を目指して実践活動をする組織で、本校では、全校生徒がクラブ員として活動しています。そして、役員(12名)が校内活動の企画・運営、トイレを中心とした校内美化活動、地域のボランティア活動、学校防災の研究活動を積極的に行っています。

(1)ベルマーク・エコキャップの回収

 「居ながらにしてできるボランティア活動」として、ベルマークとエコキャップの回収を30年間以上継続しています。
 ベルマークは、クラスに回収袋を設置し、年2回の強化期間を設けて協力を呼びかけ、上位クラスの発表を行っています。その結果、クラス対抗で積極的に協力してくれます。そして、毎年10,000点=1万円を、ベルマーク預金より日本ユニセフ協会に寄付しています。

(2)美化活動

 平成28年度に西高家庭クラブオリジナルキャラクターを全校生に募集し、キャラクターを用いて家庭クラブ活動の活性化を目指しました。
そして、課題であるトイレの美化に取り組みました。3年間の継続活動によって、明るいトイレにリニューアルし、現在も消臭ビーズを定期的に交換して、さわやかな環境の維持に努めています。

(3)地域のボランティア活動

 令和元年より地区の子ども食堂「よしいだキッチン」に参加し、小学生の宿題を見たり、一緒に夕食を食べ、その後にゲームや体育館で遊んだりして、地域の子どもたちの居場所づくりに協力しています。また、令和5年度からは、「荒川クリーンアップ大作戦」に参加し、地域河川の環境保全に協力しています。

(4)学校防災の研究活動

 近年、全国各地で自然災害が相次ぎ、本校は、洪水と火山噴火が心配されることから、家庭クラブでは、毎日長時間滞在する学校も、自然災害時の防災対策をする必要があると考え、令和2年度から3年計画で「西高防災対策プロジェクト」を実施しました。

 実態調査、研修、研究、検証、実験を行い、災害用品については、エコやコスト削減を考え、本校に適する方法を検討しました。研究成果を家庭科の授業で実践し、生徒の評価や意見を受け発展させながら取り組み、先生方の理解も得られ、令和4年度は、垂直避難訓練を実施し、災害備蓄用品を揃え、利用から返却までの行動マニュアルを作成しました。アンケートの結果「備蓄があり安心」が96%で、3年間の目標を達成することができました。
また、同じ災害リスクを伴う地域に向け、啓発リーフレットを作成し、不要なダンボール箱を活用した災害用便器を考案し、必要な方にプレゼントをしています。

 これらの取り組みを家庭クラブ連盟の研究発表大会で発表し、県大会、東北大会に毎年出場し、令和5年度には、全国大会で第2位の産業教育振興中央会賞とクラブ員奨励賞を受賞しました。さらに、「ぼうさい甲子園」でも、毎年賞をいただいています。

 しかし、防災対策に終わりはなく、また、線状降水帯の発生など、災害は、いつ、どこで起こるか分からないことから、校内に向けては、「防災訓練専用動画」を作成して、全校生の防災意識の向上を図り、災害時の夏の対策や集団睡眠の方法、携帯用防災グッズなどの研究を進めています。
 さらに、3年間の研究成果を基盤に、地域の方々や小学生、他校生とも積極的につながりを広げながら、防災対策と体験の必要性を広く啓発しています。