見出し画像

ニューヨークで研修してきました!       福島県立ふたば未来学園高校(その2)

 福島県立ふたば未来学園高校では、平成28(2016)年からニューヨーク研修を行っています。令和5年3月10日から3月18日までの9日間にわたり、高校2年生8名がニューヨーク(以下NY)を訪問し、国際機関や世界の同世代と意見交換や交流をしてきました。今回はシリーズの2回目。研修の3日目から最終日までについて、ご紹介します。

3日目 9.11家族会との懇談

 3日目は、2001年のアメリカ同時多発テロが起きた場所の一つである世界貿易センタービル(World Trade Center)の跡地に行きました。9.11を体験した方が、写真を使って当時を振り返りながら、9.11の出来事について丁寧に説明してくださいました。その後、9.11メモリアムミュージアム(9/11 Memorial & Museum)へ。ここには、事件当時の建物の柱や階段、消防車などがそのまま展示されています。
 夜は、コロナ禍において最前線で医療活動にあたり、NY研修でもお世話になっている方のご自宅に伺いました。9.11家族会の方も集まったところで、プレゼンテーションを行いました。

 9.11の展示を見て、3.11のアーカイブスも残すべきだと思いました。私たちが9.11についてよく知らなかったように、震災について何も分からない人たちが被災地を訪れた時、実物があった方が当時のことがより鮮明に分かると思うからです。震災もテロも忘れたいことだけど、絶対に忘れてはいけないことです。次世代につないでいくためにも、建物などの形に残した方がいいと思います。

NY研修に参加した生徒の感想(一部抜粋)
9.11メモリアルミュージアム。左は当時の消防車、右はニューヨーク市長のジュリアーニ氏が当時語ったヴァージルの言葉で NO DAY SHALL ERASE  YOU FROM THE MEMORY OF TIMEとあります。

4日目 国連日本政府代表部を訪問

 4日目は、国連日本政府代表部を訪問しました。志野光子 特命全権大使と懇談し、国連の役割と現状、日本政府の働きについて伺いました。NY研修のテーマにしている、「意見や立場をこえた対話の重要性」は、国連での交渉においても大切であるとのこと。児玉啓佑参事官から国連と SDGs について話を伺った後、プレゼンテーションを行いました。児玉参事官から、内容について褒めていただくとともに、「伝え方」について具体的なアドバイスをいただきました。
 午後は、国連国際学校UNIS(United Nations International School)のプログラムに参加。翌日から始まる生徒国際会議UNIS-UN(ユニス・ユーエヌ)に向け、イベントやワークショップが行われました。イベントでは、各国の学生が伝統舞踊や動画を発表する中、「ヲタ芸」を披露。ワークショップでは、ジェンダーに配慮した制服のデザインに挑戦したり、ラテンアメリカの学校に向けて壁画のデザインを考えたり、物議を醸すような本を教育に取り入れるべきかどうかについて、ディスカッションしました。

国連日本政府代表部を訪問したときの様子

5日目と6日目 生徒国際会議UNIS-UNに参加

 5日目は、国連国際学校UNIS(国連職員の子どもたちなど通学)が主催する生徒国際会議UNIS-UN(ユニス・ユーエヌ)に参加しました。UNIS-UNは世界中の学生が参加する会議で、講話を聞いたり、ディベートをしたりするプログラムです。場所は、テレビや教科書でもお馴染みの国連本部の総会議場(総会ホール)。国連紋章がある唯一の会議室です!

国連の総会議場で行われた生徒国際会議UNIS-UNの様子。写真中央は、安全保障理事会の会議室で、壁画には灰から飛び立つ不死鳥が描かれ、第二次世界大戦からの再建を象徴しています。 

 UNIS-UNの1日目のディベートの内容は、「AIを教育に取り入れることはプラスかマイナスか」でした。事前に選出された学生がディベートを担当し、他の学生はそれを聞くという形で行われました。英語で議論を聞き取ることは難しいもの。しかし事前研修で、「翻訳機能や検索機能があるため即座に調べることができ、時間短縮につながる」「AIを教育に導入することはコストがかかる」など、ALTと英語で議論していたことが役に立ちました。さらにはスマホの音声翻訳機能をフル活用。分からない単語は瞬時に翻訳するなど、工夫しながら議論に食らいつきました。

 UNIS-UNでの2日目は、「教育は公立ではなく私立であるべきだ」についてのディベートでした。ここでも、「質のよい教育を受けることができる」「私立は設備が充実している」「私立は公立よりもお金がかかり、教育を受けられる人と受けられない人とで差がでてくる」など、事前研修でALTと議論していた内容があげられており、事前研修が役に立ちました。

文明の利器を使いつつ、皆で役割分担をしてディベートの内容を把握

最終日7日目 国連本部訪問

 NY研修を締めくくるのは、国連本部でのプレゼンテーションです。児玉参事官からいただいた助言をもとに、スライドと原稿を大幅に改善するとともに、話に抑揚をつけるなど、より相手に「伝わる」よう意識しながら行いました。福島の高校生として、福島の復興に向けてどのような実践を行っているのか、そして持続可能で平和な世界の実現に向けて何をなすべきか、についての提言を盛り込んだプレゼンテーションは、今までの集大成となるもので、スタンディングオベーションをいただきました。
 国連関係者の方々から、国連やNPOで行っている取組などの話とともに、「このような取組をこれからも続けていってほしい」との言葉があり、力をもらいました。

国連本部で国連関係者の方々へプレゼンテーション

NY研修を通して得た学び

 東日本大震災からの復興や持続可能な社会づくりについて考え、世界に福島を発信してきた福島県立ふたば未来学園高校の2年生。UNIS-UNへの参加をはじめ、国連関係者へのプレゼンテーション、そして移民やアフリカ系アメリカ人の歴史や文化などに触れ、多様性と能動的市民性が息づくアメリカ文化を肌で体感してきました。報告会の最後に、「NY研修で得た学びを、これからの学校生活にいかしていきます」とありました。

 震災から12年たち、状況が変わってきている今だからこそ、これからの福島をどうしていくか、対話を通してより真剣に考えていくべきではないでしょうか。他人事と思わず、社会を構成する一員として対話に参加することで、より多くの人が分かり合える未来を築くことができるはずです。対話の機会を設けてみてください。新たな道を切り拓くことができるはずです。
 NY研修を通して、集団の中で自分には何ができるのか、自分の行動に責任は持てるのか、集団行動において大切なことは何かなどを考えることで、チームでの協働力とマネジメント力が向上しました。また、プレゼンテーションの作成・発表と対話を通して、福島と世界の現状について幅広い視点から見て考えることができるようになりました。そして何より、初めて会う人に話しかけたり質問したりする経験を重ねることで、失敗を恐れないチャレンジ精神を大きく伸ばすことができました。身につけた協働性や積極性を発揮し、NY研修で得た学びを校内や地域に還元していきます。

NY研修に参加した生徒の感想(一部抜粋)
NY研修を通して得た学びとは

福島県立ふたば未来学園高等学校のみなさん、NY研修報告ありがとうございました。研修の成果を今後の探究活動にいかして探究の内容を深めるとともに、探究活動と研修のバトンをしっかりと次に渡してください。

最後に質疑応答

 福島県立ふたば未来学園中学校・高等学校のホームページもぜひご覧ください。


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!