見出し画像

ふくしま教育通信 2023年8月号           日々の思い「だれもが初任者であった」       2022年度文部科学大臣表彰 教育者表彰       前 石川町立石川小学校長 渡辺 惣吾

 新採用教員をはじめ、若手教員が本県においても増加傾向にあり、昨年度の勤務校において、大学を卒業したばかりの2人の初任者が着任しました。初任者研修担当の先生には、年間を通してていねいに、計画的な指導をしていただく一方で、コロナ禍のため校外研修はオンライン等、対面での研修が制限されました。初めての教員生活の中で生まれる悩みや困りごとなど、どうすれば気軽に相談できるようになるか。そこで校内で始めたのが、メンター方式による話し合いでした。スキルや経験が豊富な先輩教員(メンター)が、対話や助言によって、スキルや経験が少ない若手教員(メンティ)の主体的で自発的な成長を支援する話し合いの場です。メンター方式の研修は、平成18年度に横浜市で始まったとされ、教員相互の学び合い・支え合いにより、大量採用の初任者の育成としなやかな学校組織を形成するための人材育成システムで、県教育センターからリーフレットも発行されています。

 チームでの話し合いの内容は、若手教員へのアンケート結果から、「保護者対応」「通知表の記入の仕方、所見の書き方」「生徒指導の悩み」「授業づくり(板書、発問、教材研究等)」などとなり、年間を通して開催されました。基本的に、若手教員のメンティが中心となる勉強会ですが、研修の内容により中堅・ベテランの先生方も話し合いに参加し、自己の経験を踏まえ、それまでの実践について語ります。特に、中堅・ベテラン教員の本音での語りや失敗談は、若手教員に力を与えたようです。
 チームでの話し合いとは別に、初任者自身が自己の実践を振り返り、省察を促す意味も込め、校長の私は、定期的に面談を実施しました。4月に初めて子ども達との対面で、「やった」「若い先生だ」という子ども達の声に「この子ども達のために1年間頑張りたい」と思ったこと、1学期末には日々の授業が自分の思い通りにならず逃げ出したくなったこと、そんな中でも、先輩の授業参観、また先輩からの励ましや指導をもとに、それまで教師主導だった授業から、子ども達の内面を考え、表情、つぶやきなどを生かす双方向の授業により、手応えを感じるように学年末にはなっていったこと、研究授業は大変だったが、頑張った分だけ子ども達に変化が見られ、授業に達成感を感じらるようになったことなどが語られました。

 「だれもが初任者だったんだよね」。チームの話し合いの場で何気なく発せられたベテラン教師の言葉です。話し合いは、若手教員の学びの場だけでなく、中堅・ベテランの先生方にとっても、これまでの自己の振り返り、教職への使命感の再確認、キャリア形成への意欲等につながっていったように思います。
 多忙化の解消が叫ばれる中、教師一人一人の多忙感はどうか。明日の福島の教育を担う若手をはじめとする教員一人一人が子どもと向き合うことに、充実感、達成感を感じる環境整備に努めなければならないという思いを、強くしています。
(執筆:前 石川町立石川小学校長 渡辺 惣吾(わたなべ そうご))

※渡辺 惣吾先生は、2022年度文部科学大臣表彰を受賞されました。

みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!