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ふくしま教育通信 2024年1月号            編集後記 「何とぞ何とぞ・・・」          教育総務課長 堀家 健一

 新しい年がまいりました。元日から能登半島での震災。親族が集う楽しい時間が一変してしまう悲劇に心が痛みます。亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、一日も早く日常生活が取り戻せることを祈念しております。

 元日、我が家は大阪に帰省中でした。翌日に妻の実家のある福井に移動予定だったところ地震が発生。幸い妻の実家に被害はなかったものの帰省も難しい状況だったので急遽、新幹線を変更。今回は仕方ないねという義父母ですが、餅やお節を準備して孫に会うことを心待ちにしていたことを思うと心中慮(おもんぱか)られます。改めて元気に笑顔で会える機会の貴重さを感じた年始でした。

 この時期、県では2月議会での来年度予算議案の審議へ向け検討が進みます。その際、大きなハードルになるのが財政部局との調整。財政規律を担当する部局からの真剣かつ厳しい指摘に応える中で事業が磨き上げられてはじめて予算案として提出することが可能になります。

 こうした予算折衝、実は我が家でも。共働きの我が家ですが家計の管理は妻が担ってくれていて私はノータッチ。冗談みたいな話ですが、ここ10年近く私はATMを触ったことが無く、酷いときには財布の中身が小学生のお小遣いみたいな日も。どうしても欲しいものがある場合は妻に「何とぞ何とぞ」とお願いをするのです。

 去年、一番粘り強くお願いしたのがスピンバイクの購入。家の中で自転車をこぐ運動ができるものです。福島に来てからランニングを趣味にしていますが、足を痛めている時や雨や雪の日に走ることができず悶々とすることもしばしば。そんな中、足を怪我していても屋内で運動ができるスピンバイクの存在をネットで発見。いろんな機種やメリット・デメリットを調べて要不要を熟考の上「どうしてもこれは欲しい」と決心。「これ欲しいんだけど…」と妻にメッセージを送ります。「これは大物!特に音とスペースが問題ね」と早速リアクション。そこから私の交渉が始まります。

 まずは妻の懸念の払拭。磁力を使って負荷をかける形式なので音は静か。場所も比較的省スペースで物置兼洗濯物干しにしている部屋のデッドスペースにすっぽり収まるサイズ感ですと説明。加えて費用対効果も。私は元々、短距離ランナーだったので長い距離を走ると怪我しがち。膝、すね、足の甲と順番に痛めては病院にいって湿布をもらい、治ってはまた走って痛めてを繰り返していました。通院費や湿布代、足下が悪い中で無理して走って怪我するリスクを考えるとスピンバイクに要する費用は費用対効果がいいのですと熱弁します。諸々交渉を重ねて無事、査定完了。晴れてポチッと発注して貰えるのでした。

 この我が家での妻へのお願い、実は事業を構築していく上でも必要な視点だと思っています。限りある予算の中ただ「欲しい」「やりたい」では通用しません。現状をしっかりと分析した上で、必要性や費用対効果、その手段が本当に適切なのか等、説明責任を果たせることが重要です。これがいわゆるEBPM(Evidence Based Policy Making)と言われるもので、事業を構築するに当たって現在の取組の効果や課題を数値に基づき検証した上で、その施策によって具体的に見込まれる効果等を根拠に基づいてモデル化しつつ事業を構築するというもの。

 教育分野では「教育の成果は一朝一夕では生まれない」という理屈を盾にして思考停止していることが多い印象。各施策も「研修会に何人参加しました」「会議を何回開催しました」というアウトプットは把握している一方、本当の狙いである「児童生徒の資質・能力がどれだけ向上したか」というアウトカムとの関係では成果につながっていないケースが多く、本来アウトカムとしての成果につながっていないのであれば手段である各施策について再検討して、より適切な手段を講じる必要があると考えています。

 今年度、福島県教育委員会が実施した施策に関する点検・評価では、従来とは大きく変えて目標値との関係で達成状況を確認しました。担当が粘り強く調整してくれた成果で、その結果、道半ばの取組も多くあること、事業のアウトプットは達成しているものの、本当の狙いであるアウトカムには繋がっていない状況を確認することができました。来年度の事業では、把握した現状を踏まえた施策が求められています

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/593680.pdf

 なお、我が家に導入されたスピンバイクは雨や雪の日も含めて週に数回30分から1時間程度こいでいてフル活用(アウトプット)。その成果として12月に走ったハーフマラソンでは、昨年初めて走ったハーフマラソンから7分ほどタイムを短縮することができ(アウトカム)、スピンバイクの購入はなかなか良い施策になったのではと評価しているのでした。

 何よりも、財政規律をしっかりと維持しつつ、耳を傾けて要不要を判断してくれる妻に感謝です。

今月も最後までお読みいただきありがとうございました。


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