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ふくしま教育通信 2024年2月号            編集後記「いつかの出会いに思いをはせて」   教育総務課長 堀家 健一

 2月に入りました。寒波が来て雪が積もる日もあれば一転、春のような暖かさで雪がすっかり解ける日も。暖かい日が来ると過ごしやすさを感じる一方、凜とした朝の空気や雪が積もった明るい夜中、不思議と暖かい空気感など、冬が過ぎ去っていくもの悲しさを感じます。

 今年の夏、お祭りで貰った小さなユーカリの木を庭に植えました。コアラが食べる葉っぱのイメージがあるので寒い冬は大丈夫かなと心配していましたが、雪が積もっても元気いっぱい。気がつくとすくすく伸びています。娘たちも「こんなに大きくなっている!」とびっくり。最近暖かいからいっぱい伸びたのかななどと考察しています。

 福島の冬は空気も澄み、街灯の光も少ないので星が煌めきます。娘たちを迎えに行って夜空を見上げながら歩いていると「あれオリオン座だよね」と嬉しそうに星空を眺めます。

 先日はJAのイベントで大豆から豆腐を作る体験も。ミキサーにかけて、おからと豆乳を分け、にがりを入れて固めていく作業を経験します。できたての豆腐とおからサラダの美味しいこと。結構な量を作ったのにペロリと食べきってしまいます。大豆の収穫も経験し、お店に並んでいる豆腐がどれだけ手間がかかってできているのかを知る良い機会になりました。

 五感全てで味わう福島での経験は都会では決してできないとても豊かなもの。きっと彼女たちが大きくなったときにその礎となる貴重な原体験になるのだろうなと思っており、福島に娘たちを連れてきて本当に良かったなと実感する日々です。

 原体験というと実は細々と美術館通いを趣味にしている自分にも。小学校3年生のとき、ボーイスカウトのキャンプで訪れた岡山県倉敷市にある大原美術館でモネの「睡蓮」に出会ったときでした。何だかぼわっとした絵で、子ども心に正直何を描いているのか分からなかったのですが、その美しい色彩と醸し出す雰囲気に見とれてしまいました。今では頭でっかちに、印象派の嚆矢(こうし)であり光を絵画で表現するために色彩分割で描かれて明るい絵が多いんだよなとか、カメラの出現によって現実の写実ではなく描き手の感性を生かした絵画の道を開いたんだよなといった感想を持って見てしまうのですが、当時はただただ全身でその絵画の持つ世界観を感じて圧倒され、その後も大学時代にもう一度、倉敷にその絵を見に行くなど、自分の心を捉えて止まない作品になっています。

 その経験もあってか、何となく美術館に行くのが好きで、有名な企画展だけでなくぷらっと常設展を見に行くことも。子どもが生まれてからはなかなか機会も少ないですが、昨年度は県立美術館と県立図書館で開催された企画展「生誕100年朝倉摂展」に関連した「アートなおはなし会」に子どもを連れて行きました。県立の美術館と図書館が隣接する立地を生かして、テーマと関連した絵本の読み聞かせ、展示の鑑賞、ポストカード作りと一体的に体験できる機会で子どもたちは大満足。美術館も図書館も「なんだか楽しいところ」という印象を持ってくれています。

 県立美術館では2026年から「大・ゴッホ展(仮称)」の開催が予定されています。震災と原発事故から15年が経過した福島の地に、非常に貴重なゴッホの作品がやってきます。個人的にはゴッホ作品では「星月夜」の躍動する静寂の力強さと青と黄色の美しいコントラストが大好きなのですが、今回、来日が予定されている「夜のカフェテラス」もガス灯の明かりと青い夜空の対比が非常に美しい作品です。福島の子どもたちの心を大きく揺さぶり、忘れ得ぬ貴重な原体験になるのではと期待しています。

 地方も含め、本物の文化芸術に触れる原体験をしっかりと子どもたちに届けられる機会が重要だなと改めて感じています。

 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。

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