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ふくしま教育通信 2023年12月号         日々の思い「セザンヌに憧れて」        高校教育課長 箱崎 兼一

なぜそうしたのかわからないけれども、そうせざるをえなかったのだろうと思うことがあります。
高校に入ったら、美の追求に青春を賭けようと思いました。
丸刈りにし、学生帽をかぶり、画集を学生カバンにしのばせ、美術部に入りました。
すばらしい先生とよき仲間に恵まれました。
たいしてうまくはありませんでしたが、思うがままに、白いカンバスに絵筆を走らせました。

白色は白色であって、白色ではない。白色は白色だと思い込んではいけない。
美は見えているようで見えていないが、見えていないようで見えている。
制作は作品との対話であり、こちらから語りかけたからといって語ってもらえるわけではないが、語りかけなければ語ってもらえない。
作品はもう一人の私である。では、私とは何か。
作品のモチーフとなる世界は美に満ちている。では、世界とは何か。

美の追求は、広く深く、果てしないものでした。
あれから四十年が過ぎ、絵筆を持つこともありません。
セザンヌに憧れた青春の日々は、遠い昔の思い出となりました。
今もなお、私の心に大切な何かが残っています。
それがどういうものかはうまく言えません。
その大切な何かをどうしても伝えたい、分かち合いたいと思いながら、教育という仕事に携わっています。
(執筆:高校教育課長 箱崎 兼一(はこざき けんいち ))

左:ポール・セザンヌの銅像。中央:セザンヌが過ごした南フランスのエクサンプロバンス(通称エクス)にあるロトンドの噴水。右:セザンヌがよく描いたサント・ヴィクトワール山。


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