ふくしま教育通信 2024年1月号 リレーエッセイ「2024年の始まりに」 福島県教育委員会教育長 大沼 博文
〈被災地への思い〉
元日に発生した能登半島地震から2週間。昨日、大学入学共通テストが終了した。被災地の受験生はこの間、不安の中で直前に迫る試験に向き合っていたことだろう。
一方、学校は3学期がスタートしたが、被害が大きい地域では授業再開の見通しが立っておらず、中学生の集団避難も検討されているという。
本格的な受験シーズンはこれから。子どもたちのケア、サポート体制の確保、通常の教育活動再開に向けた対応など、各学校では長期的な取組が必要となるだろう。12年前の困難を乗り越えてきた私たちは今、何が出来るのか。一人一人が考え、行動に移していきたい。
被災地の子どもたちにとっては、しばらく困難な状況が続くと思うが、どうか乗り越えていってほしい。
(※1月15日 執筆)
〈仕事始めの式で〉
1月4日、仕事始めの式。本庁幹部職員に対して、第7次福島県総合教育計画の更なる推進に向け、二つのことを意識し、実践しようと呼びかけた。
一つ目は、学校現場に伴走する教育委員会でありたいということ。
教職員一人一人が生き生きと活躍でき、子どもたちにとっても安心できる学校、ウエルビーイングが満たされた学校にするためには、教職員が主体的に対話を重ねる中で余白をつくり、業務の軽減を図る。このことが、学びの変革、すなわち子どもを自立した学習者に導く授業へと転換することにつながっていく。県教育委員会として、引き続き学校現場の声に耳を傾け、対話し、伴走しながら、教職員、保護者、地域の皆さんとともに、こうしたプラスの循環をつくり出していきたい。
二つ目は、7次計画の推進のため、組織力をさらに高めたいということ。
組織力を高めるには、①共通の目標、②職員の貢献意欲、③職員間の意思疎通、の3つの要素が必要であるといわれる。今後も、職員同士、職員と管理職との定期的な対話の機会を設け、7次計画の目標、理念を共有することで、職員の仕事が組織目標にどのように寄与しているか立ち返るきっかけに、そして一人一人の士気の向上につなげていきたい。
〈汝、何のためにそこにありや〉
「街並みの ひとつひとつが 資料館」(会津学鳳中学校1年 石田晴さん)
「ふるさとの 思い出巡り 語りべに」(母 由紀子さん)
昨年12月の「ふくしまを十七字で奏でよう」表彰式で、最優秀賞を受賞した親子の作品である。生まれたばかりの娘さんとともに避難後、母親の故郷である双葉地方を初めて巡った時のことを詠んだという。
震災直後、多くの教職員が自らも被災しながら、また避難所となった学校では避難者の対応に追われながら、児童生徒の安全確認に奔走した。さらに、学校再開後も子どもに寄り添い、一人一人の成長を支えてきた。13年目となるあの日を前に、そして現在の能登半島に思いを巡らせながら思うのは、学校とそこで働く教職員が、児童生徒はもちろん地域住民にとっても大切な存在であるということである。
この間に築き上げてきた「福島ならではの教育」をさらに深化させていくため、年の始めに改めて自らに問う。「汝、何のためにそこにありや。」この言葉は、昭和30年代の終わりから4年間、県立秋田高校長を務められた鈴木健次郎先生が、儀式の際に繰り返し生徒に問いかけた言葉という。
自分はなぜそこにいるのか、自分はどういう生き方をしていきたいのか。2024年も、この言葉を私自身に問い続け、その実現に向けて自覚的に努力していきたい。
皆様、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
(執筆:福島県教育委員会教育長 大沼 博文(おおぬま ひろふみ))