特別企画 令和5年度教育者表彰(文部科学大臣表彰)受賞者寄稿 お墓参り~感謝を伝え、ありのままの自分と対面する~ 福島市立吾妻中学校長 福地 裕之 (前 福島市立福島第四中学校長)
2012年9月16日、友人を一瞬にして亡くしました。交通事故でした。友人が運転する車に対向車が車線をはみ出して走行し、衝突しました。助手席には奥様が同乗していたので、友人は命がけで奥様を守りました。友人はいつもこうでした。家族のことを第1に想い、病気をすれば手厚く看病し、悩んだ時には近くに寄り添っていました。私たちに対してもそうでした。
友人の仲間は、毎年9月にお墓参りに行きます。お花とお水を供え、お線香を焚き、手を合わせます。そして、友人とともに酒を交わします。(住職には了解を得ており、故人の供養としています。)ここからは、互いの情報交換タイムとなります。
お墓参りに行くと、なぜか心が穏やかになります。故人と会うことができるからなのか、自分を見守ってくれている感謝の気持ちを伝えることができるからなのか、不思議に落ち着きます。そして、お墓の前では、ありのままの自分になって、自分との対話もできて、素直な自分と対面することができます。人間だからこそできることです。
私自身のことになりますが、十数年前に墓地を買いました。親のお墓の近くにです。けっして大きくはない墓地ですが、見ているだけで、なぜか落ち着きます。何かあったら、ここに住めばいい!最終的に入る場所が決まり、心は穏やかです。
告別式の弔辞で、私は友人にお願いをしました。ご家族のこと、私たちのことを天国から見守ってくださいと。現在、奥様もお子様もそれぞれの生活の中で元気に過ごしていますし、私たちも残り少なくなってきた教員生活を子どもたちのために精一杯がんばることができています。感謝の気持ちでいっぱいです。
友人が存命であれば、今年度が退職になります。生前に受けた薫陶をもって、天から見守ってくれました。私たちの心の中には、今でもいるのです。「ご退職おめでとうございます。」
今年は13回忌。
またみんなで行きます。