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ふくしま教育通信 2023年7月号              編集後記「おもちゃ箱」                    教育総務課長 堀家 健一

 夏が来ました。福島でも連日35度を超えるような日が続き酷暑の様相を呈しています。一方で自然に囲まれているため朝晩はしっかりと気温が下がり吹き抜ける風も心地よい。車を走らせながら青い空と白い雲、雄大な山々の緑のコントラストを眺めていると、妻も「ほんといいところに来たねぇ」と呟いてくれています。

 前回、子どもたちの風呂敷遊びについて書かせていただきましたが、子どもの遊びで悩んでいるのがおもちゃ箱の整理整頓です。祖父母からプレゼントで貰ったものに加えて、保育園で作ってくるお面やステッキのようなおもちゃ、児童館で作ってくるスライム、外でもらった風船など、気がついたらすぐにおもちゃ箱がいっぱいに。そんな様子を見て「いい加減に片付けなさい」と言いますが子どもたちはどこ吹く風。結局、整理整頓できずに上に積み重なっていって何がどこにあるのか分からない状況になります。そうして「あれがない」「これがない」「お姉ちゃんが取った」など諍いが始まり「ちゃんといるものといらないものを整理しなさい!」と怒られるのでした。

 一度おもちゃ箱の中を全部出し、これからも使いたいもの、使わないけどどうしても大事なものを選び、「これは『ありがとうございました』しようか」と断捨離を進めます。ひっくり返してみるとよく分からないパンフレットやボロボロになったティッシュ、果ては行方不明になっていた靴下の片方まで出てきます。改めて見直してみると思いのほか不要なものが沢山積み重なっていて、それらを除いて整理してみると、使いたいおもちゃがすぐに取り出せて気持ち良く使え、大事にしたいおもちゃをきちんと大切に使えるのでした。

 この様子を見ていて働き方改革も一緒なのだと感じています。福島県教育庁でもこれまで当たり前だと思っていた業務を抜本的に見直していきましょうと、細かく行われていた連絡・報告の打合せを資料の共有で済ませたり、紙での資料の回覧や共有を電子データにしたり、スケジュール機能を活用して日程調整をする際にわざわざ予定を聞き回る手間を省いたりとしています。また、定時退庁日の実施徹底や19時消灯日の設定等、当たり前のようなことから取り組みはじめています。

 県教育庁で遅ればせながらこうした取り組みを始めた背景には、県教育庁の働き方が学校現場の働き方にも繋がっていると感じているということがあります。学校現場では、文部科学省が実施した「勤務実態調査」でも依然として長時間勤務の教師が多い状況が指摘されています。県教育庁で指導主事や管理主事として働かれている先生方は、ゆくゆくは学校現場で管理職等として活躍される方々なので、県教育庁の働き方改革を進めることが、ひいては学校現場の働き方改革に繋がると思っています。

 また『ライフ・シフト』などで著名なリンダ・グラッドンの文章を読んでいたときに次のような言葉がありました。

 少子化が相当進んだ日本においては、若い世代の社員を確保することがますます重要になります。そうした状況の中で柔軟な働き方を提供しようとしない企業は若い働き手を採用することが困難になってきます。手っ取り早く働き手を確保するためには高い報酬を用意することですが、ほとんどの企業には今以上に賃金を増やす余裕がないでしょう。だからこそ、フレキシブルな働き方を提供すべきですし、政府もそうした変革を支援すべきです。

『コロナ後の未来』(文春新書)

 全国的に教師不足が話題になっており、本県においても、令和6年度教員採用候補者選考試験の志願者について、校種別の倍率が、小学校で1.4倍(前年度1.5倍)、中学校が3.6倍(前年度5.1倍)、高校が9.6倍(前年度10.1倍)となっています。学校現場も若い世代にとって魅力的な働き方を提供できるように不断の見直しをしていかなければならないと感じています。

 おもちゃ箱の話に戻ると、親からすると「そんなの何に使うの」というものが娘にとっては非常に重要だったりします。長女にとって大事なものと、次女にとって大事なものも違ったりしています。学校の働き方改革も、一律に「あれは必要」「これは不要」と仕分けられるものではないのだろうと思っています。各校のスクール・ミッションや伝統、地域との関係などによって、大切に残していかなければならない業務も異なってくると思います。だからこそ、それぞれの学校で改めて、業務を見直してみるという作業が大事なのだと思います。

 ちなみに娘たちのおもちゃ箱は前述のプロセスを繰り返しています。新しい業務が積み重なっていくと気がつくと溢れてしまう。だから定期的な整理整頓が必要で、そうしたところも働き方改革と一緒なんだなと思ったりしています。

 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
(執筆:教育総務課長 堀家 健一(ほりいえ けんいち))