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ふくしま教育通信 2023年6月号         編集後記                        教育総務課長 堀家 健一

 いよいよ梅雨入りです。じっとりとした長雨はその雨を降らす分厚いどんよりとした雲の色と同じように気分を憂鬱にさせますが、3階から5階に移った庁舎の窓から見える雨の日の吾妻連峰は山霧をまとって幻想的な姿を見せてくれ、雨の日も悪くないなと思わせてくれます。

 雨が続くと休日も外遊びがしにくくなり屋内での時間が増えます。我が家はテレビを置いていないので娘たちは外に出たそうにしつつ、姉妹でいろんな遊びを繰り広げています。特に2人はごっこ遊びが大好きで、そのときに活躍するのが風呂敷です。いろんなもの詰め込む鞄になったり、お姫様のドレスになったり、布団になったり。イメージの世界で様々なものに見立てられ、自由自在にその姿を変えていきます。特に驚いたのは人魚姫。1枚を腰に巻いて人魚の尾を再現し、もう一枚は髪を結ぶゴムを持ってきて上手く結んで人魚姫の胸当てに。なるほどこういう使い方ができるのかと妻と感嘆してしまいました。祖父母からのプレゼントなどいろんな玩具を貰ってきましたが、一番長く愛用しているアイテムが風呂敷ではないかと思います。

 娘たちが通っている日本舞踊でも、扇子や手ぬぐいなどの小道具が、人形や馬を引く手綱に見立てられています。民謡に合わせて子どもたちが上手く視線や身体の動きを通して表現すると、確かにそこに小さな赤子の人形や手綱を引かれる馬がいるよう。また京都の庭園などで見られる枯山水も砂利の流れや岩を海や川、島に見立てて作られていて、縁側に座って眺めていると何だか海岸に座っているかのような気分に。こうしたイメージの膨らみや、物の見立てというのは古くからの日本の文化なのだと感じます。

 イメージの持つ力、そこにはないけれどもあるように想像を膨らませる力というのは、非常に人間的で高度な能力です。拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の進歩が著しい中ですが、少なくとも知覚のレベルでは具体的にその刺激を認知する必要があります。それを超えて刺激レベルでは別のものを認知しているけれども、イメージを働かせて別のものとして想像して見立てるというのは、機械ではできない人間ならではの創造力の源だと感じます。

 こうした力の重要性は、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)に加えて、芸術、文化等の教養を含めた広い範囲でのArtを加えた「STEAM教育」という言葉が、各教科等での学習を実社会での問題発見・解決に生かしていくための教科等横断的な学習として近年の教育界で重視されていることにも現れています。各教科等の学びを基盤としつつ、様々な情報を活用しながらそれらを統合し、課題の発見・解決に結び付けていく上では、豊かな想像力が基盤となります。

 STEAM教育等の各教科等横断的な学習の推進について(文部科学省)https://www.mext.go.jp/content/20230515-mxt_kyouiku01-000016477.pdf

 いろんな物が手に入りやすくなり物が溢れる現代社会だからこそ、本物に触れる機会も重視しつつ、イメージを膨らませる想像力をしっかりと育んでいきたいなと思います。

 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
(執筆:教育総務課長 堀家 健一(ほりいえ けんいち))