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模擬裁判選手権オンライン大会準優勝者に聞く 10の質問

 8月3日(土)に実施された模擬裁判選手権オンライン大会で見事準優勝に輝いた福島高校チームのメンバーに10の質問に答えていただきました。

オンライン選手権のメンバーの皆さん

※模擬裁判選手権
 高校生が検察役と弁護人に分かれ、架空の刑事事件を題材に裁判で主張を競う。オンライン大会は24県から4校のみに出場権が与えられる。


質問1 模擬裁判選手権に参加することを決めた理由はなんですか?

 チーム代表の大宮が、昨年11月に開催された「女性弁護士に聞いてみよう!弁護士ってどんな仕事?」という郡山市で開催されたシンポジウムに参加した際、弁護士の先生から大会のことを教えていただきました。もともと法や弁護士に興味があったので、弁護士や検察官の方々から直接手ほどきを受けられると聞き、迷わず参加したいと考えました。また、その2年前には尊敬する先輩が参加されていたことも、参加を決める後押しになりました。
 その後、法学部や法曹を目指していたり、進路を決めるきっかけを探していたりした仲間が、大宮のメンバー募集に対して大会を面白そうだと思い、4人が集まりました。

質問2 選手権に向けてどのような準備をしましたか?

 まずは、実際の大会の教材を読み込んで、事件の争点や時系列を整理しました。
 支援弁護士の先生方や司法修習生の方々が、学校まで来てくださって支援をしていただく期間が始まると、第1回では実際の刑事手続きの流れを教えていただきました。その後の支援では、検察側・弁護側のそれぞれの主張の核となる論告・弁論や、それに必要な情報を証人や被告人から引き出すための尋問や質問を作りました。作っては先生方からヒントやアドバイスをいただき、何度もブラッシュアップを重ねました。
 本番の5日前には、福島地方裁判所の大法廷で、弁護側と検察側に分かれて、大会の流れに沿った練習もさせていただきました。先生方のご支援は全部で7回にもなり、大変に勉強になりました。

質問3 選手権で担当した役割は何でしたか?その役割をどう感じましたか?

大宮 検察官が証人に質問をする「証人尋問」と、「検察側の主張である弁論」と、「弁護側の冒頭陳述」を担当しました。証人尋問は、裁判の中身で1番最初に行う質問なので、証人にとっては答えやすく、聞く人にとっては分かりやすくなるよう意識しました。必要な情報は深掘りし、それ以外は喋らせないというのが、どこか冷たいですが、凛としていると感じました。

鳥海 弁護側の「証人反対尋問」と、「弁護側の主張である弁論」を担当しました。どのように被告人の立場を優位にさせられるのか、憶測を排し、証拠に基づいて論理立てて考えるのにとても苦労しました。

沼田 弁護人が被告人に質問をする「被告人質問」と、弁論に加え、「検察側の冒頭陳述」の朗読を行いました。実際に用意した内容だけでなく、相手の言い分も鑑みて臨機応変に裁判に参加するのは難しかったですが、やり甲斐も感じました。

齋藤 「反対質問」と、論告を担当しました。反対質問は検察から被告人に尋問できる役割です。ここで、裁判官の人たちに被告人の行動について疑問をもたせないといけないので大切な役割だと感じました。

質問4 チームとしてどのように協力し合いましたか?

 実際に会って話し合う機会は、勉強や部活動などの都合から支援をいただく時間以外には実はほとんどありませんでしたが、オンライン上でドキュメントを共有し、お互いが作ったものに付け足したり意見を出したりしながら、主張や質問を作成しました。
 役割分担はしていましたが、リハーサルでは、お互いの主張を聞いて矛盾点や課題を明確化したり、本番はどちらの立場であるか関係なく、全員で大会に向き合いました。

質問5 選手権の中で特に印象に残った瞬間やエピソードはありますか?

 鳥海が担当した弁論の中で、被告人から引き出せてはいなかった情報を用いてしまったのですが、メンバーがすぐにそれに気付いて、急いで修正することができました。準備段階で築き上げた協調性が活きた場面だったと思います。

質問6 模擬裁判を通じて学んだことや得た教訓はなんですか?

 挙げるとしたら2つのことがあります。
 1つ目に、「思いやりのある文章」が書けるようになりました。裁判には、私たちは知っているけれど、法廷には出せない書類があり、その内容を用いたい場合には、質問で引き出さなければいけません。そのため、質問と回答がともに分かりやすくなるように、聞く人のことを考えて準備を進めました。また、言葉としての意味の範疇で正確に用いることも重要だと気づきました。これらのことで、相手の立場に立った文章をつくる力が高まったと感じます。
 2つ目に、物事を多角的に捉える考え方や、物事には異なる解釈が存在する可能性があるということについて学びました。同一の事件から、検察側と弁護側の両方の主張をつくる必要があったので、出てくる情報がそれぞれにとってどのように有利にはたらくのか、それとも不利なのかと選別をしました。2つの立場に立ち、そのどちらの立場の主張においても正しいと信じて主張を作ったので、本当に真実が2つあるような気さえします。
 実際の社会でも、答えが出ていない問題や、互いにとっての真実が存在するがゆえの対立がありますが、その解決の難しさを改めて実感する機会になりました。その時に必要とされるのが、論理的に分かりやすく伝えることであり、今大会を通して培った力だと感じます。

質問7 選手権後、自分の法律に対する興味や関心はどう変わりましたか?

 もともと法に興味があるメンバーでしたが、今大会を通して関心が非常に高まりました。特に、進路に対する意欲に影響が大きく、新たに法学部への志望を決めたり、大学卒業後の人生計画を再び考えたりした人もいました。

質問8 他の参加者や審査員から受けたフィードバックで特に心に残っているものはなんですか?

 伝わりやすい言葉に変えること、質問を長く続けず区切ること、時系列に沿った質問をすることについてのアドバイスが心に残っています。これらに共通するのは、質問される人が答えやすくなるということです。自分の主張を裏付ける根拠をより引き出すためにも、質問でも相手の立場に立って考えることが重要だと感じました。

質問9 将来も模擬裁判に参加したり、法曹界を目指したりする予定はありますか?

 来年にはみんな受験を控えているので、再び模擬裁判に参加する予定はありません。
 しかし来年、後輩がこの大会に興味をもって参加してくれるときは、できる限り学びを共有し、応援したいと考えています。この大会を通して法曹界を目指す決意をした人も、その決意を新たにした人も、法曹を目指すわけではないけれど、法への興味を一層深めた人もいます。

質問10 もし次の機会があったとしたら、模擬裁判選手権に向けて、更にどのような点を改善したいですか?

 もし時を戻してもう1回できるとしたら、論告・弁論とそのスライドをもっと作り込みたいです。主張とスライドが対応しきっていなかったり、出ている情報を使い切ることができていなかったりしたのが、もっとよくできた点だと思います。
 しかし、自分たちなりの全力で取り組むことはできたので、大会が終わった今は、とにかく清々しい気持ちでいっぱいです。

模擬裁判選手権、お疲れ様でした。皆さんの夢が叶うよう心よりお祈りいたします。