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2024年10月号 リレーエッセイ   「読書してますか?」         県立高校改革監 佐藤 隆広(さとう たかひろ)

 私は、小説を読むのが好きだ。電子書籍ではなく、紙の本。月に1~2冊読む。最近は、「泣ける物語」にはまっている。

 先の報道で大きな衝撃を受けた。文化庁の読書に関する調査結果である。漫画・雑誌を除き本を月に1冊も読まない人が6割超と初めて5割を超え、前回の調査から約15%も増えた、とのこと。どの年代でもまんべんなく読書離れが進んでおり、若い世代ではスマホ・タブレットのおかげで本を読む時間がなく、中高年は仕事や視力低下など健康問題によって本を読まないのだそうだ。一方で、本を読まないと回答した人に、インターネットで記事などを読む頻度を尋ねる項目では「ほぼ毎日」との回答が約75%と最多で、「活字離れとは言い切れない」(文化庁)との見方もある。

 かく言う私も、実は、小説を読むのが好きになったのは、50代に近づいた頃である。それまでは、「本を読む」ことが、宿題や勉強の延長のような気がして「無理矢理読まされている」というイメージが強かった。そんな私が小説にはまるきっかけとなったのは、ふらっと入った本屋でふと目にした、現役医師でもある方の短編集だった。短い物語がいくつか集まっているので、飽きずにサクサクと読めて、「一粒で二度おいしい」ではないが、一冊でたくさん楽しめた。そのうち、次はもっと長編を読みたいなと思うようになった。本屋やネットで読みたい小説を探すのも楽しい。決められた本をいつまでに読まなければならない、ということがなく、自分の好きな本を、好きな時に、好きな場所で、自分のペースで読める。飽きたら、最後まで読まずに、途中でやめてもいい。ネットやリサイクルショップを通じて比較的安価で購入することできるし、図書館で探してみてもいい。
 スマホが生活の中心となっている社会では、氾濫している情報の中から必要な情報のみへアクセスを繰り返し、これまで以上に時間の経過が早いような気がする。だからこそ、周囲の喧噪から離れ、時間の流れを止めてくれるような感覚が味わえる「小説を読んでいる時間」は、私にとって、まさにエンターテイメントだと思う。