2024年12月号 リレーエッセイ 「VUCAは今だけ?」 教育庁 庁参事 関場 智彦
このnoteにおける年度初めの挨拶で、VUCAの話をしましたが、その後、ある雑誌の記事で「将来が予測不可能なのは今だけなのか?」という文章を目にしました。その時からちょっと気になるフレーズではあったのですが、先日、この9月に南相馬市小高区に全面オープンした「縄文の丘公園」を訪れたときに、改めてこのことを思い出しました。
縄文遺跡に造られたこの公園は、太平洋に近い台地の上にあります。縄文人が生活していた頃は海に突き出た岬であり、観察館となっている貝塚も今は台地の斜面上ですが、当時は海岸線であったようです。台地の縁に立つと、水田が広がっている一体が当時は入江であったことも想像できます。
相当に長い時間軸の話ではありますが、縄文人の見た景色と我々が見ている景色は、同じ場所に立ちながら大きく異なることとなり、ここでも予想しない環境変化が起きていたわけです。
縄文海進は地球規模の変化の話ではありますが、身の回りのテクノロジーや社会環境は、人類誕生からも常に変化しており、それらの多くは、どの時代にあっても予測不可能な変化であったに違いありません。
ただ、古代と現代での大きな違いは、その変化のスピードです。それぞれの時代区分の年数を実際の長さの比率に一致させた「等尺年表」を眺めて見るとそのことが分かります。
100年を1cmに換算すると、縄文時代が約140cmなのに、平成は3mmしかありません。昭和元年からでも、1cmしか進んでいないことを考えると、加速度的に環境変化のスピードが速くなっていることに気がつきます。
現代は、縄文時代とは異なる理由で海面水位が上昇しているようですが、どんな時代であっても、変化の波に溺れぬ術は身につける必要があるようです。