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伝統をつなぐ一員として 施設財産室 室長 小島 哲

 私は、地元の民俗芸能の保存に携わっています。小野町の浮金地区に伝わる「浮金小獅子舞」という、県内でも数多く見られる三匹獅子の一つです。小学生から中学生までの子どもたちが踊り手で、毎年9月になると約2週間の練習を行い、秋祭りに神社に奉納します。

 例年、子どもたちは入れ替わりがあり、一人が卒業して新しいメンバーが一人入りますが、指導する大人や先輩達の中で、踊りだけではなく挨拶や礼儀を身につけ、日に日に成長する姿にはいつも感心します。また、指導する保存会のメンバーはほぼボランティアですが、皆、小獅子舞に対する愛情や誇りがその原動力になっており、その背中を見て子どもたちにもふるさとへの愛着が芽生えていくように感じます。

 その小獅子舞ですが、今年は3月下旬から練習が始まりました。というのも、5月5日に伊勢神宮で舞を奉納するという大イベントが予定されていたためです。この奉納、前回昭和55(1980)年以来、44年ぶりであり、伊勢神宮の舞台ということで、練習にも一段と熱が入りました。

 そして当日、大勢の参拝客が見守る中、参集殿能舞台において舞を行いました。踊り手の子どもたち、笛・太鼓の太夫の皆さん、緊張感もありましたが、それ以上に高揚感を感じているようで、いつもより威勢のいいかけ声が響いていました。約30分の舞はあっという間に時間が過ぎ、それぞれ大きな達成感を胸に舞台を後にしました。

 さて、この浮金小獅子舞ですが、天明の大飢饉の後から230年以上続いているといわれています。ただ、踊りがずっと同じだったわけではなく、変遷があります。例えば、かつてはおなかに小さな太鼓を結いつけて踊っていたそうですが、その後、踊り手が子どもということで太鼓が省略されました。それにより、踊りがよりダイナミックになり、獅子舞のクライマックスである「かみあい」では、二匹の雄獅子が牙をむき雌獅子を奪い合う様子が躍動的に表現されています。これだけ跳んだり跳ねたりする獅子舞は他ではあまりないのではないかと思っています。

 このように、それぞれの地域で独自の進化を遂げているのが民俗芸能の魅力の一つであり、それが地域の誇りにつながっていると思います。少子化で踊り手の確保も次第に難しくなってきていますが、先人から受け継いだものをしっかりと伝えつつ、進化させていくことができたらいいなあと思っています。
 今年も、敬老の日直前の土日に秋祭りが行われ、浮金小獅子舞が奉納される予定です。興味のある方は、ぜひお越しください。