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ふくしま教育通信 2023年10月号       リレーエッセイ「ブレイブ・ブロッサムズ(BRAVE BLOSSOMS)」          教育庁県立高校改革監 佐藤 隆広

 楕円球を追う屈強な男たちの熱い闘いが、連日繰り広げられている。ラグビーのワールドカップ2023フランス大会である。数多のスポーツの中で、最も愛するのがラクビーだ。連日、深夜や早朝、手に汗握り、選手の動きに一喜一憂しながら、一人、テレビにかじりついている。日本代表戦に限らず、大学ラグビーも好きだ。プレーの経験はない。

 自分が惹かれるラグビーの魅力、それは何だろう。
 一つ目は、ダイバーシティー(多様性)とインクルージョン(包摂性)。パワーで相手を押し倒す巨漢もいれば、上背があって高い地点で捕球できる者、小柄で小回りが効く者、細身だが脚力のある者など、個々の身体的特長を活かせる様々なポジションがラグビーには用意されている。さらに、個々の国籍や文化も違う。そういった15人が、ONE  TEAMを形作っている。

 二つ目は、自己犠牲。個人の尊重や権利が優先される現代にはフィットしづらいフレーズではある。試合では、ややもすれば、快速ウイングの切れ味鋭いランや多彩なキックなど、バックスの派手なプレーに目が行きがちである。しかし、ラグビーの本質は、そこにはないと思っている。フォワードを中心にすべての選手が相手と体をぶつけ合い、密集でもみくちゃになりながらも、一瞬でも早く立ち上がり、懸命にボールをつなぎ、味方をサポートする。このプレーの連続こそがラグビーの本質であって、その姿勢は犠牲そのものである。特に日本代表は、他国の選手より体が小さいだけに、自己犠牲の姿が、観る人々の心を打つのではないだろうか。

 最後が、規律。ピッチの中で、選手同士がこまめに集まり相談し合いながら、選手たち自身がゲームを組み立て、課題があれば試合の中で修正し、時には、レフリーの傾向に合わせて対応する。試合中にピッチの脇から指示を出す監督の姿は、そこにはない。

 「One for All,  All for One」。
 自分一人のためではなく、チームメイトのために走る、タックルする、起き上がる。他人のために頑張れる人間は、当然自分のためにも頑張れるだろうし、ひいてはそれが皆から必要とされる人間であろう。観戦後の興奮冷めやらぬ心の内に去来した思いである。
(執筆:教育庁県立高校改革監 佐藤 隆広(さとう たかひろ))