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これまでも、これからも地域とともに歩む 伊達高等学校の取り組み             福島県立伊達高等学校

 福島県立伊達高等学校は、1922年に旧 保原町に県北(けんぽく)地区2校目の県立中学校として創立された旧制保原中学校に由来する保原高等学校と、梁川町立実科高等女学校以来、100年の伝統を持つ梁川高等学校が統合し、2023年4月、旧 保原高校の敷地内に開校しました。旧制保原中学校は地元待望の中学校であったため、建設の際には、保原町民の協力で地ならしや土固めを行い、生徒たちが数キロはなれた町内の山林から十数台の大八車で赤松を運んで前庭に植えるなど、創立当初から地域とともにありました。地域住民とともに学校づくりが行われ、子どもたちはここで学び、巣立った人材が地域を支え、さらにその子どもたちが同じ学び舎で学ぶという、まさに地域コミュニティーを維持・発展させる好循環が形成されてきました。
 伊達高校は、今年度より包括連携協定を結んだ伊達市と協働して、地域の特色を生かしたさまざまな学習活動を取り入れています。伊達の未来を担う人材を育成することを目指して、両校の地域密着の学びを継承・発展させています。今回は、本校の取り組みの一端を紹介いたします!


1 伊達市との包括連携協定をいかして

(1)包括連携協定で目指すこと

 本校は、令和5年4月18日に伊達市と包括連携協定を結びました。協定では、「地域の特色を活かした取組を体系化し、深化・拡充させることで、生徒の学習活動と成長を促し、地域創生を担う人材の育成を図り、活力あふれる個性豊かな地域社会の形成と発展に寄与すること」を目標に掲げています。

 伊達市は、2006年に県北地区の5町村が合併して誕生しました。その伊達市の中心に位置し、同市の政治・経済を牽引する保原町にあるのが、本校です。そこで、この地政学的な特色を生かして、地域と連携した創意工夫のある横断的・総合的な学習を展開しています。
 「ダテな学び~地域探究未来学」と称している総合的な探究の時間では、生徒一人一人の個性を伸ばし、自ら学び自ら考えるなどの「生きる力」を培うとともに、健全な社会観、愛郷心、職業観、人生観を持って地域の未来に貢献できる人材の育成を目指しています。
 そのために本校では、自己の在り方生き方を考えながら、ものの学び方・考え方を身に付け、問題解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育んでいます。さらに、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、自らよりよく問題を解決する資質や能力も育んでいます。

(2)1年次での「ダテな学び」

 1年次では、まず身近な地域に興味関心を持ち、自ら学び、地域の歴史・経済などへの理解を深めます。さらに、地域課題の発見と解決に必要な知識・技能を身に付け、探究の意義や価値を理解します。
 そのために、ICT機器等を活用し事前学習を行った上で、フィールドワークを行い、身近な歴史・文化遺産、地域産業に触れることを通して、リアルに地域を体感します。

(3)2年次での「ダテな学び」

 2年次では、自らの進路を見据えて、実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自ら課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現する力を伸ばしています。
 そのために、ICT機器等を活用した発表会において、自らの探究で発案した地域課題の解決策をプレゼンテーションしたりします。

2 地域とともに歩みを進めて

(1)美術作品で地域に貢献

 美術部では、地元保原町のイタリアンレストラン「TRATTORIA La Wasabi」、「2023夏展」として8月3日から9月4日まで、20号以下の作品6点を展示させていただきました。同店は、フードロスの削減や農家と連携したマルシェの開催など、2002年の開業当時から地域に貢献しているお店です。実は、今年3月にも保原高校美術部小作品展を開催させていただいており、今回は伊達高校として初めての展示となりました。
 地域と学校が芸術を介して協同し、そのすそ野を広げていくことで、芸術がより一層、市民の身近なものとなり、「市民が生き生きと心豊かに暮らせるまち」、「文化芸術の力を活用した魅力あふれるまち」が実現できます。文化的で活力ある地域社会が実現すれば、学校と地域を包含するソーシャル ウェルビーイングの形成につながります。今後とも、このような関係・取組を大切に続けていきます。

(2)カップのデザインで地域に貢献

 伊達市東南の里山が広がる地域では、プラムが生産されています。富成地域まちづくり振興会では、地域の特産品のプラムを使って「とみなりジェラート」を開発し、そのカップのデザインを本校1年の渡邉香苗さんが考案しました。渡邉さんは、「プラムの赤い色味をベースに、若い世代で流行している “ レトロ感 ” のあるデザインにしました。老若男女を問わず、多くの人に手に取ってもらえたらうれしいです。」と話しました。
 プラムを使った6次化商品自体珍しく、価値がありますが、地域住民の思いがこもったアイスクリームのカップを、地域で育った生徒が精魂込めてデザインすることで、「地域との一体感」というさらなる付加価値が加わりました。プラムの収穫時期に合わせて、秋ごろまでの販売を予定しており、道の駅 伊達の郷 りょうぜん(伊達市)などで取り扱っています。

美術部1年の渡邉香苗さんと、富成まちづくり振興会の湯田健一会長

(3)6次化商品の開発で地域に貢献

 商業科では地域の農家、菓子店などの全面協力により、生徒による6次化商品の開発に取り組んでいます。商品開発は2018年にはじまり、企画力や提案力が養われます。地元との繋がりを感じることで、地域を担う人材育成にもつながっており、特産品の活用に留まらず、地域活性化策を提案する役割も担ってきました。近年は内閣府が主催する「地方創生☆政策アイデアコンテスト」に参加し、さまざまな方策を発表しています。2019年には、同コンテストにおいて、伊達市特産のあんぽ柿の価値を高める取り組みなどを発表し、東北代表として全国大会に出場して高い評価を得ました。また、市職員と一緒に地域課題を考える授業なども行っており、高校生の視点が取り入れられるなど、実践的な学びが地域に還元されています。
 昨年も、商業科3年の流通ビジネスコース選択者が、伊達市の菓子店や果樹農家などの協力をえて、シャインマスカット大福や桃のショートケーキ、洋梨を挟んだオムレットなど、特産物を使ったオリジナル商品を開発し校内販売を行いました。4月から授業で取り組み、協力店に出向いて企画提案するなど、魅力的な商品になるように試作を重ねました。食欲をそそるデザートのチラシ作成をはじめ、ポスターや注文票も自分たちで作ることで、商品販売の流れも学びました。オリジナル商品はどれも地元の食材を取り入れており、ある生徒は福島県が日本有数の日本酒の産地と知り、酒かすと市産のシャインマスカットを組み合わせた大福を作りました。「先を見通して進める大変さがわかり、将来に生かせそう」とやりがいを感じていました。

3 ケヤキのように

 本校の南西角に大きなケヤキの木がそびえています。今年3月に発刊した「保原高校100周年記念誌」によると、1924(大正13)年に、池田三之助氏(中学校1期生)により寄付されたもので、当時は奉安殿の傍らに立つ2mくらいの若木でした。保原高校生を見守り続け、今では幹回り3.3mの大木となりました。次の100年に向け、新たな歩みを始めた新生 伊達高校で、大ケヤキはここで学ぶ高校生、それを導く教職員、そして学校を支える地域の皆さんを、これからもずっとずっと見守ってくれることでしょう。

 新生 伊達高校においても、地域とともにある学校という建学の精神は不変です。本校では、地域の良さを大切にした「伊達高ならでは」の教育を進めるとともに、不確実性が高まる現代をたくましく生き抜くための資質を磨きつつ、個別最適化された学び、協働的な学び、探究的な学びへと変革していく「学びの変革」を実践してまいります。また、子どもたち一人一人の多様な幸せと社会全体の幸せである「Well-being」を実現していくために、社会の課題に主体的に向き合い、多様な他者と協働して解決に向かう力を育んでいきます。

100年前のケヤキ(※奉安殿の右脇)          現在の大ケヤキ    

※ぜひ伊達高等学校のnoteサイトと学校のHPもご覧ください!!