福島教育通信2024年12月号 日々の思い 「南会津のわたし」 高校教育課長 高橋 喜智
このタイトルは、私が今年の3月まで勤務した県立南会津高等学校の校歌の一節である。令和5年4月、統合校として新たな歴史を刻み始めた高校として校歌も新しいものになった。郡山市出身の小説家・劇作家である古川日出男氏に作詞を依頼したのだが、この歌詞が本当に素晴らしい。過去と現在、未来の時空間をつなぎながらも、郷愁がそこかしこに見え隠れする、背伸びをすることなく自分が立つその一点から日常の事象を捉え、無限の可能性を秘めた若者の背中を押してくれる、そんな歌詞だ。
二番、三番の歌詞もぜひ南会津高校のホームページでご覧いただきたい。作曲家の田中達也氏によるやさしい旋律にのせられた校歌を、その年の開校式で全校生徒と教職員で声高らかに歌い披露した。
私は今も、自分が卒業した小学校、中学校、高校の校歌を空で歌える。そして、勤務した学校の校歌も辿々しいが歌うことができる。あのとき、あそこにいた仲間と歌うこともあれば、ふと思い出して鼻歌をすることも。声に出さずとも校歌が浮かぶと必ず当時の光景がよみがえってくる。どんな子どもだったのか、どんな子どもに見えていたのか、それは知る由もないが、私にとって学校はとにかく楽しい場所だった。
南会津町には2年間お世話になった。言わずと知れた豪雪地域。長靴を履いて登校してくる生徒に「今年は雪が少ないですよ」と言われたが、いわき出身の私には十分すぎるほどの積雪だった。西郷村から甲子高原道路で西に、峠を越えると夏はさわやかな新緑、秋は燃えるような紅葉の山々に、そして冬は銀世界に迎え入れられる。蕎麦、じゅうねん味噌をぬって炭火で焼いたしんごろう、世界に誇る銘酒の数々。南会津に根づく奥深い文化にふたたび包まれる感覚とともに、しんしんと降る雪の中を歩く生徒の姿を、この校歌は思い出させてくれる。