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福岡から福島へ 思いを寄せて

 令和5年10月4日(水)に、はるばる九州から福岡県立ありあけ新世高等学校の2年生5名と校長先生をはじめとする先生方、そしてNPO法人つなぎteおおむたの理事長が福島県庁を訪れ、大沼教育長と懇談しました。
 なぜ福岡県の高校生が福島を訪問したのでしょうか。これまでの交流の経緯とともに、福岡県立ありあけ新世高校の高校生の思いをご紹介します。


1 福岡県立ありあけ新世高校と福島との交流

 福岡県立ありあけ新世高校は、福岡県大牟田(おおむた)市にある総合学科の高校です。大牟田市は、西は有明海に、東と南は熊本県に接し、かつては三池炭鉱のもと「炭鉱の町」として栄え、三池港(2015年にユネスコの世界遺産に登録)を有する市です。ありあけ新世高校は、農業・商業・普通科の高校3校を前身として平成15年に開校した総合学科の高校。7つの系列があり、生徒は100以上もの幅広い分野の科目の中から、自分の適性や希望に合わせて授業を選択します。

  現在の大牟田市      三池炭鉱宮原坑        現在の三池港   大牟田市から見た有明海

 ありあけ新世高校と福島との交流は、平成28(2016)年にさかのぼります。当時、ありあけ新世高校の「被災地支援プロジェクト」のメンバーが、南相馬市の被災地訪問を企画。キッカケは、震災から5年を特集したテレビ番組を見たこと。「直接自分たちの目で被災地を見て、自分たちが支援できることは何かを考えたい」とし、福島県を訪問。相馬高校の生徒とともに沿岸部の被災地を訪問しました。その後、ありあけ新世高校では、文化祭で福島県産品をバザーで販売したり、「総合学科成果発表会」で福島復興への思いと支援の取り組みについて発表。さらには、その発表会に相馬高校を招待するなど、交流をつづけてきました。

ありあけ新世高校のH28「総合学科成果発表会」では「買うことも支援の一つ」というスライドが


2 今回の訪問は

 コロナ禍の影響で、ここ数年、福島県を訪問することができなかったそうですが、毎年文化祭では、福島県から取り寄せた物品を販売するなど、福島にずっと思いを寄せてきた、ありあけ新世高校。
 最初に高校生から「今回は『福島の今を知る』をテーマに訪問しました。多くの出会いがあり、たくさんのことに触れて学びました」とあいさつがありました。次いで校長先生から「7年前に訪れた福島の、今を知るために訪問しました。生徒の思いがつないだ福島県と本校とのご縁が、末永く続くことを祈念いたします」との言葉がありました。

「夏休みに大牟田市の活性化を図るイベントを開催し、収益を福島県訪問の旅費に充てました」と、ありあけ新世の校長先生。7年前も、福島県産品をバザーで販売して旅費に充てたそうです。

ありあけ新世高校が訪問したのは
・東日本大震災・原子力災害伝承館
・震災遺構 浪江町立請戸(うけど)小学校
・福島水素エネルギー研究フィールド
・浪江町の農家、水産加工業、浪江まち物語つたえ隊OCAFE(オカフェ)
・双葉町の撚糸工場、双葉駅周辺
・南相馬市の小高パイオニアヴィレッジ
・相馬高校 など

3 福島の訪問で感じたことは

 ありあけ新世高校の2年生が、4日間の福島訪問で感じたことを発表してくれたので、ご紹介します。

・原子力災害という目に見えないものに対する恐怖など、皆さんの思いが心に迫りました。OCAFEで紙芝居を聞いて、体験した方の言葉はやはり違うと感じました。お会いした方が皆さん前向きで、元気をもらって、本当に来てよかったなと思いました。
・小高パイオニアヴィレッジでの「視点を変えることで、それがチャンスにつながる」という言葉が核心を突いていて、心に残りました。「ゼロベースだからこそできることがある」「福島だからこそできることがある」という言葉もその通りだと思いました。これから何十年、何百年後、ここは日本の最先端をいくところだと思いました。
・ネットでは原子力発電所の1~4号機までが水素爆発したとしていましたが、実際に東日本大震災・原子力災害伝承館で話を聞いて、そうではないことを学びました。ネットの情報をすべて信じるのではなく、現地に行って体験した方の話を聞くことが大切だと感じました。また皆さんとても前向きだったので、私も「ピンチをチャンス」と思って前向きに行動したいです。
「光の部分もあれば、影の部分もある」という言葉が印象に残っています。インターネットやニュースなどでは、「震災から12年たった今、復興が進んでいる」という部分が多く取り上げられていて、確かに電車が全面開通したり建物が増えていたりと光の部分もあったけど、一方で、草がいっぱい生えていたり震災の状態が残っていたりもしていました。実際に来て見てみないと分からないことがたくさんあって、訪問してよかったと思いました。
・一番印象に残っているのは、東日本大震災・原子力災害伝承館です。常に備えの意識をすることの大切さを感じました。また12年経っても残っている影の部分は、福島に来て、自分の目で見て、見つけることができるものなんだなと感じました。

福島を訪問して感じたこと、印象に残ったことを話す ありあけ新世高校の2年生。


4 大沼教育長から高校生へメッセージ

 大沼教育長から、「皆さんの先輩がつないでくださったご縁を受け継ぎ、福島に心を寄せていること、何よりも、わざわざ資金集めをして足を運んでくれたこと、感謝の気持ちでいっぱいです。光と影のどちらもあるということを肌で感じてくれましたが、住んでいる方と言葉を交わして、自分の目で確かめてみることが大事」とありました。その後、大沼教育長から、震災前後の学校の様子についてと、高校生へのメッセージがありました。

 震災前は双葉郡8町村と飯舘村、南相馬市小高を含めて、8,300人の小中学生が学んでいましたが、震災後、別の場所で教育活動を続けざるを得なくなり、双葉町の学校は今もいわき市で教育活動を行っています。現在、小中学生は1,100人で、震災前の14%しかいないという状況です。高校は5校が休校して、伝統を受け継ぐ形で平成27年にふたば未来学園高校が、平成29年に商業と工業が統合して小高産業技術高校が開校しました。高校生は3,400人いましたが、現在は1,400人くらいです。震災前の状況には戻っていないというのが現実です。
 光と影という話がありましたが、福島では、震災を次の世代に伝えていく活動に加えて、「福島ってたくさん課題がある。課題をどうしたらいい方向に向かわせることができるだろうか」という課題を探究する学びが、小中から高校まで先進的に取り組まれてきています。学校に戻ったら、福島で感じたこと、見てきたことを友達にぜひ話してください。

南相馬市小高出身の大沼教育長。語り尽くせないほどのメッセージを高校生に届けます。
大沼教育長の話にメモをとりながら耳を傾ける高校生。福岡に戻ったら周りの人に伝えてください。


福岡県立ありあけ新世高等学校の皆さん、ありがとうございました!!

福岡県立ありあけ新世高等学校のHPもぜひご覧ください。