ふくしま教育通信 2023年5月号 日々の思い 「『30年』に想うこと」 財務課長 松山 政行
新採用で学校事務に従事して以来、実に30年ぶりに教育庁に戻ってきた。いわゆる “3ナンバー” なのだが、車のようにゆったりとはいかず、心の中で毎日のように冷や汗をかいている。
初めての勤務先は勿来(なこそ)工業高校であった。当時、いわき市は全く知らない土地、その南端の勿来(くるなかれ)という地名も相まって、出勤初日に顔を強ばらせながら校門を通ったことを鮮明に覚えている。そんな自分の気持ちを察してか、事務の諸先輩方はもとより、先生方には温かく接していただき、日中はそれ相応に、酒の席ではその3倍以上鍛えていただいた。ここでの経験が自分の原点であり、懐かしさとともに感謝の念に堪えない。
学校では、主に授業料などの収入事務と旅費を担当していた。パソコンのない時代、あるのは共用ワープロ1台だけで、発議書はカーボン複写式が主流であった。100人を超える教職員の旅費計算をせっせと手書きで行っていたが、今や児童・生徒一人一台端末の整備が進んでいる。また、当時の勿来工業は5科9クラス、定員360名だったが、現在は4科4クラスで定員160名、少子化の進行を痛感せずにはいられない。そう言えば、土曜日は半日勤務だった。こうしてみると、30年前と今、まさに隔世の感がある。
翻って自分自身はどうか。この30年でどれほど成長したのかと自問しても、心許ない答えしか返ってこないが、二つ思い浮かんだ。一つは「初心忘るべからず」。謙虚に人の話を聞けば知識も広がり、コミュニケーションにもなる。もう一つは「固定観念にとらわれない」。先日もアンラーニング(Unlearning)の記事を目にしたが、これまでの常識がこの先も通用するとは限らない。予測困難な時代、過去の学びを大切にしつつも、物事を俯瞰的(ふかんてき)に見るよう心がけたい。
改めて、今の仕事に目を向けてみる。いろいろと判断に迷うこともあるだろうが、そんなときには30年前を思い返して、まずは懸命にもがいてみようかと思う。多少遠回りになっても、案外進むべき道が見えてくるのではないか、そう信じて。
(執筆:財務課長 松山 政行(まつやま まさゆき))