ふくしま教育通信2023年11月号 編集後記 「たまには文字を」 教育総務課長 堀家 健一
冬が来ました。毎朝、次女を自転車の後ろに乗せながら見る吾妻小富士は、白くお化粧をし始め、他の季節に見る姿よりも「キリッ」と端正な印象に。これから雪が積もると自転車に乗れないなと心配しながら眺めています。
先日、磐梯青少年交流の家で開催されたイベントに家族で参加しました。白河市出身の書家である根本みきさんの手ほどきで書道を体験する企画があり、娘たちは毛筆を初体験。初めて触る筆と墨に四苦八苦しつつ、根本さんに優しく手ほどきしてもらいながらお手本をしっかり見て字を書いていきました。
その経験が楽しかったのか「書道をしてみたい」と言うので近所の体験教室に。先生から「この字はこういうところを意識して書くときれいに見えるよ」とアドバイスを受けながら書くとみるみる上達します。先生にも褒められて得意顔。普段の学校の宿題は「たくさん字を書くのが面倒くさい」というにも関わらず、この日は嬉々としてたくさん字を書いたのでした。
その傍らで私も万年筆を使ったペン習字に挑戦。改めて字を書いてみるととても新鮮です。最近、ペーパーレス化の流れの中で資料も全てPDFにしてタブレットに保存して持ち運んでいるので、文字を書くことがほとんどありません。日頃のメモ書きもタイピングかスピード重視の走り書きになっている中、一文字、一文字、丁寧に時間をかけて書くというのはいつ以来だろう。いろんな思考や雑念を置いて集中して文字を書くという時間は、とても得がたい貴重な時間だなと感じたのでした。
現代の子どもたちは昔に比べて握力が低くなっているので、小学校での鉛筆は2B以上の濃いものをという話も聞きます。1人1台端末環境下で、文字を書く機会も我々親世代に比べると格段に少なくなるでしょう。
一方で「文字」は人類文明が、情報を保存し伝えていくために生み出した画期的な発明であり、我々の歴史に欠くことのできない重要な要素です。お手本をしっかり見て、一本の直線、曲線、止め、はらいを丁寧に書いていくという行為は、文字とは人に何かを伝えるための媒体であり「読み手」を意識しなければならないことを改めて認識させてくれます。また、美しい字を見ると理屈では表現しがたい美しさがあることを感じさせます。
先日視察させていただいた相馬市立桜丘小学校では「書く」ということを重視していました。毎時間、教師がその授業の「めあて」を書くときに子どもたちが同時に書き取る「とも書き」に取り組んでいます。教室を回っていると、低学年であってもしっかり自分の意見を書き込んでいます。しっかりと読みやすい字で書くということも意識されています。教科横断的なリーディング・スキル(読解力)の育成に意欲的に取り組んでいる学校ですが、読み取る力の育成とともに、しっかりと伝えることにも意識して取り組まれていてとても勉強になりました。
ICTをフル活用した授業もこれからの時代求められるものですが、ICTでは育成できない力もしっかりと意識しながら取り組む必要があります。次のお正月には娘たちと書き初めをやってみてもいいかもなと思う、そんな経験となりました。
今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
(執筆:教育総務課長 堀家 健一(ほりいえ けんいち))