見出し画像

ふくしま教育通信 2023年5月号         編集後記                     教育総務課長 堀家 健一

 春から夏に季節が移りゆく新緑の時期がまいりました。新型コロナの感染症法体系の位置づけが5類へと変更され、徐々に平常化への歩みを進めていると感じています。娘の小学校でも運動会が開催され、昨年度は分散形式で自分の子どもの学年だけを観覧する形でしたが、今年度は全学年の保護者が一堂に会して応援をするスタイルに。沢山の応援に囲まれ気持ちよさそうに駆け回る子どもたちの姿に微笑ましい気持ちになりました。

 最近、長女が自分で三つ編みをできるようになりました。後ろで括ることや簡単な二つ結びぐらいであれば自分でできていたのですが、三つ編みは難しいということでこれまでも朝「お父さん、今日は三つ編みして!」ということがしばし。当然ながら自分で髪を結ぶことがなかった私は四苦八苦。妻に教えて貰いながら練習して何とか娘の髪を三つ編みにすることができるようになっていました。
 小学生になり鏡の前に立ち、櫛で髪をとかしながら括って身だしなみを整えます。「この辺がポコってなっちゃうの」と髪の膨らみに苦労しながら結んでいた娘が、いつの間にか三つ編みまでできるようになり、少しの寂しさを感じながら子どもの成長に目を細めています。年長さんの次女も姉の姿を見て不思議な位置で二つ結びをしたり。こうして試行錯誤を繰り返す中で、徐々にできることが増えていくのだなと改めて感じます。

 学びにおいてはこのトライアル&エラーが重要です。茨城県で有機農園を経営している久松達央さんの著書を読んでいると、農業は自然と大地を相手にしたトライアル&エラーであり、その過程で具体と抽象を行き来することが重要なのだと。その年の具体的な作物で経験した失敗を抽象的に捉えていくことで、別の年、別の作物でも応用が利くようになると。

 これはまさに学校教育にも通じるもので、概念的理解を獲得するためには、多くの失敗を経験し、事象を抽象化する中で比較、関連付けを行うことが必要です。具体と抽象を往還していく中で、文脈や個々の要素が変わっても、臨機応変に対応できる概念的な理解が獲得されるのだと思います。

 そのためには学校がたくさんの失敗を許容できる場である必要があります。ともすると正しい答えを導くことが良いことだという雰囲気が生まれがちな学校現場ですが、大切なのは守られた環境の中でたくさんの失敗を経験して、試行錯誤をすることだと思っています。
 多くの課題が山積する学校現場ですが、子どもたちが安心してたくさん失敗できる学校現場となるよう、支えていかなければと感じています。
 娘の宿題を見ていると「言うは易く行うは難し」という言葉が頭をよぎりつつ。

 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
(執筆:教育総務課長 堀家 健一(ほりいえ けんいち))