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令和4年度末 退職校長辞令交付式並びに感謝状贈呈式

 令和5年3月27日、自治会館において、令和4年度退職校長辞令交付式が行われました。
 当日は、例年より早い開花を迎えた桜の木々に祝福されるような、素晴らしい日となりました。
 式では、退職校長を代表し、双葉郡大熊町立学び舎ゆめの森 佐藤由弘校長によるあいさつがありました。
 あいさつの中では、これまでの長い教員人生の中で起こったいくつもの大きな変化を自分事として受けとめ、子どもたちの未来のために力を尽くしてきたことが述べられました。

 ここに全文を紹介しますので、ぜひご覧ください。

退職校長辞令交付式代表あいさつ

春の柔らかな日差しが感じられる
今日のよき日に、
福島県教育庁の皆様のご臨席を賜り、
このような退職校長辞令交付式を
開催していただきましたことに、
感謝申し上げます。

ただ今、大沼博文教育長様より辞令を、
また身に余る労いの言葉を賜り、
感激もひとしおです。

思い返せば、新任校長辞令交付式で
福島県教育長様より直接、辞令を賜り、
県民の皆様の信頼に応えるべく、
責任の重さを感じ、
緊張していたことを、
つい昨日のように思い出します。

私たちは、
三十数年間の教員生活を全うし、
本日を迎えることができましたのは
これまで支えてくださいました
多くの方々のおかげであり、
まずは深く感謝申し上げます。

教員として
昭和、平成、令和の3つの時代で
教員生活を送ってまいりました。
その間、4度の学習指導要領改訂により、
児童生徒の学校における「学び」の意味は、
大きく変わりました。

また、2007年の
「特殊教育から特別支援教育へ」の大転換。
「障がいのあるなしにかかわらず
 共に生きる福島の特別支援教育」が
福島県学校教育審議会で審議決定されて、
「多様性」の教育に
いち早く舵を切ることになりました。

県立川俣高等学校が
文部科学省指定の研究開発学校として、
「高等学校における特別支援教育」の研究を
全国に先駆けて行い、
現在の高等学校における
通級指導教室設置の
法改正につながりました。

職場環境も「鉄筆ガリ版」から
「ワープロ、パソコン」へ。
初めてのボーナスを
全てパソコンの購入に費やしたことが
思い出されます。

そして、今は、学校教育のDX化により、
タブレット端末の時代。
社会の急激な変化に順応して、
自らが受けてきた教育の価値観にとらわれず、
常に新しい価値観をアップデートしていく
柔軟性とスピードが求められてきた
教員人生だったように感じます。

そんな中で人生観、教育観を
大きく変えられたのが、
何といっても、2011年の東日本大震災と
それに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故による避難でした。
未曾有の災害の大変な中で、
「第三十五回全国高校総合文化祭(ふくしま総文祭)」が、
関係者みんなの力を結集して、
八月に開催されました。

そこで発表された
創作劇「福島からのメッセージ」。

 「福島に生まれて、福島で育って、
  福島で働く。福島で結婚して、
  福島で子どもを産んで、
  福島で子どもを育てる。
  福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、
  福島で最期を過ごす。
  それが私の夢です。
  あなたが福島を大好きになれば幸せです。」


高校生の、純粋な、熱いふるさとへの想いが、
福島から全国へ発信され、
時の内閣総理大臣をはじめ、
多くの大人たちの心を動かしました。

「教育者としての自分とは何か」。
あらためて、学校教育の「そもそも」を
考えるきっかけをもらいました。

震災と原発事故、
そこからの復興の過程で
多くの分断と対立を経験してきた
福島においては、社会のあらゆるところで、
誰も正解が分からないような
困難な課題の解決に向けて対話し、
協働してきました。

「対話し、誰一人取り残さない基準で、
ものごとの本質を考え、
選択して前に進むこと」を
積み重ねる中でこそ、自らと社会を変革し、
未来を創り上げていくための
人間力が育まれまれるということを
学んできました。

それは、平和で民主的な
社会の形成者を育成するという
公教育の最大の使命でもあり、
自らの自由と他者の自由を
相互に承認しながら、
共に生きる市民社会の担い手、
すなわち自由な市民を育成することにも
つながります。

不確実で複雑な、
誰も正解を知らない
予測不可能な課題に
向き合わなければならない
これからの時代において、
個人と集団のWell-being、
一人一人の多様な幸せと
社会全体の幸せを実現し、
私たちの社会を変革していく。

12年前の経験を踏まえて、
「多様性を力に変える」教育へと
教育の質的な転換を成し遂げるということ、
すなわち、
「ふくしまならではの学びの改革」が
求められています。

東日本大震災とコロナ禍から、
「できない」ではなく
「どうしたらできるか」を考えること。
第七次福島県総合教育計画の目指すことや
理念を繰り返しそしゃくし、
本質をしっかりとつかみ、
そこから照らして
一つ一つの施策や
改革の「意味」を考えること。

各教職員の個性をいかし、
対話と協働を重視しながら、
思い切った「変革」へ向けた
具体的な取組を一つ一つ実現していくこと。

やっと学校教育の本質が少し見え、
学校経営が
面白く感じられるようになってきた時に、
残念ながら定年退職です。

今後、私たちは
それぞれに社会の一員として
新たな道を歩んでいくことになりますが、
それぞれの立場で、
未来を担う子どもたちの健やかな成長と、
お世話になった社会のために
微力ながら尽くしてまいる所存です。

結びに、支えてくださった
全ての方への感謝と
福島県の教育が益々充実・発展することを
ご祈念申し上げ、
退職校長130名の代表の挨拶といたします。

令和5年3月27日

退職校長代表

大熊町立学び舎ゆめの森
校長 佐藤 由弘

大熊町立学び舎ゆめの森 佐藤由弘校長

 時代の激流の中にあっても、常に子どもたちに目線を合わせ、教育活動に尽力されてきた先輩方のご退職は、さみしい限りです。
 しかしその思いは着実に若い世代に受け継がれていくことと思います。
 ご退職される先生方、これまで本当にありがとうございました。