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ふくしま教育通信2023年10月号         編集後記「当たり前の向こう側に」       教育総務課長 堀家 健一   

 秋がきました。朝晩は寒いぐらい涼しくなる一方で日中は比較的暖かくなり、着る服に迷う季節です。娘も朝はモコモコした上着にスパッツを履いていくのに、迎えにいくと涼しそうな格好に。子どもなりに上手く気候の変化に対応しているようです。

 先日は娘の小学校の町探検の引率に参加してきました。引率とは言っても保護者は後ろから見守るだけ。小学2年生の子どもたちが、事前に調べてある安全な道を一列になってスタスタと歩いていきます。勝手に親か先生が先頭に立って歩くと思っていたので「子どもたち先頭で大丈夫ですか」と先生に聞いたところ「しっかり準備してきているので見守ってあげてください」とのこと。見学させていただく動物病院までの700m弱の道のりを、行って帰ってきた子どもたちの姿に感心したのでした。

 自分たちでしっかり歩みを進め、動物病院の仕事を調べて帰ってくる。この経験は子どもたちにとって大きな自信になったと思います。また安直に「大人が引率する」という判断をせずに、勇気をもって見守るということの大切さを改めて感じる経験となりました。

 また10月15日に開催されたMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)には、福島県出身の今井正人選手が最年長の39歳で出場。期間内に指定されたマラソン大会で2時間10分の記録を切った者のみが出場できるパリ五輪の代表を選考するための大会です。結果は途中で制限時間オーバーとなってしまったために失格となってしまいましたが、20代の選手が中心の中、大会前のインタビューでも「年齢は数字でしかない」と答え、直前に負った怪我を言い訳にせずに懸命に食らいつきながら走る姿に胸を打たれました。

 この大会には、今年初めて開催された福島シティハーフマラソンにもゲストランナーとして出場した36歳の川内優輝選手も出場。スタート直後から飛び出し終始レースを牽引しました。序盤からスパートすると息切れしてしまうので集団で出方をうかがいながら走り、後半に勝負をかけるのが一般的ですが、「そうした走りでは世界に通用しない!」と走る背中で若手を叱咤激励します。2位集団に追いつかれて以降も粘りの走りで4位フィニッシュでした。

 お二人とも年齢や戦略の「当たり前」を良しとせず果敢にチャレンジしていますが、教育の世界でもこれまでの「当たり前」を打破していくことが必要なのではと感じています。

 例えばですが、よく話題になるのが校長先生や教頭先生の出退勤。校長先生は朝一番に学校に行って鍵を開けるものだ、教頭先生は必ず教員全員が退勤してから施錠するものだという話をよく聞きます。しかしながら、解錠・施錠は職員で役割分担しローテーションして行くことも可能です。働き方改革の先進校である宮城県立柴田高校では、時間割を工夫することで教員が早出・遅出の勤務時間を選択することを可能とし、夕方子どもの迎え等がある人は早出出勤を、朝の子どもの送りがある人は遅出を可能にしたりしています。早出出勤の人は勤務時間終了後にはしっかりと退勤していくので、学校全体としても残業しないという雰囲気が作られ、超過勤務の縮減が図られているそうです。

 また、富山県南砺市の小中学校では「チーム担任制」が導入されています。1学級1担任とする従来の学級運営の方法を見直し複数の教員がチームで学級運営にかかわるというもの。例えば図画工作はベテラン教員が、体育は若手教員が中心に授業を進めるなど、教職歴や得意教科に応じた適材適所の指導体制が可能となり、分担することで授業準備や教材研究に時間をかけることができ、より授業の質を高めることにもつながっています

 地域や家庭もこれまで学校が担ってきた部分について、本当に学校がしなければならないのかを考え直すことが必要です。これまでの学校は多くのことを引き受けてきました。例えば、朝早く子どもが学校に来ると教員はその分、学校を早く解錠しないといけなくなります。「7時には来る子がいるから6時半には出勤しないといけない」という校長先生の話を聞いたこともあります。共働き社会の中、早く子どもが家を出ないといけない場面も出てくるのですが、そもそも学校が開く時間の前に来校するというのは、子どもの安全確保の観点からも望ましくなく、学校に甘えてはいけないと思うのです。

 こうした小さな積み重ねが教師という仕事の魅力を奪ってしまうということがあってはいけません。子どもたちを未来へ向けて育んでいく。学校や先生方がそうした本来の職務に取り組める環境を様々な「当たり前」を超えて考えていかなければならない段階に来ている気がします。

 今月も最後までお読みいただきありがとうございました。
(執筆:教育総務課長 堀家 健一(ほりいえ けんいち))