ふくしま教育通信 2023年12月号 日々の思い「『生き方』の礎 生きて働く知識・技能の観点から-『違う視点に立つ習慣』と『価値観醸成』-」 2022年度文部科学大臣表彰 教育者表彰 前 福島県立福島高等学校長 佐藤 弘樹
新学習指導要領改訂の方向性では、「知識・技能」について「生きて働く」という機能的側面に言及しています。そしてそれらの機能は横断的につながり発展し、個の「生き方」の礎になります。
そのような観点から、私が今「生きて働く知識・技能」と感じている2つについてお伝えします。
「違う視点に立つ習慣」
「違う視点に立つ」ことで、気付きが生まれます。
例えば、タテの視点。木を見て森を見ずとならぬよう、今の取組が全体計画の中でどうあるのかを確認すること。また、今の取組とこれまでの取組(歴史)を比較して差異を感じることなどです。
加えてヨコの視点。同じ情報の受け止めを、他者と比較すること。発信者が第三者で、受け止めが自他で差異が認められる場合は、背景にある情報量の影響や、基本的な価値観の相違が考えられます。また発信者が自分で、他者の受け止めとの差異が大きい場合は、言葉選びの再検討もしくは例示など具体性を持たせることが必要になるでしょう。
「違う視点に立つ習慣」は、コミュニケーション力や客観的な判断力の養成につながります。重い判断(決断)が必要な場合には、なおのこと生きて働きます。
「価値観の醸成」
多様な価値観に触れることは、自らの価値観を広げ、高めます。皆さんそれぞれに影響を受けた人や言葉があることと思いますが、私の場合は「ラグビー憲章」です。
ラグビーは精神的価値を大切にする文化があり、プレーヤー、レフリー、観客も含め、携わる全ての人々は5つの価値観(コアバリュー:①品位②情熱③結束④規律⑤尊重)を共有します。これに反するプレーや勝利は、ラグビーとは言えないのです。
ワンフォアオールやノーサイドの精神など、ラグビーでよく聞く言葉の源はここにあります。私は自分を振り返る時の規準にしています。
生徒に向き合う課題や、県全体の課題(ふくしま国体、スポーツの部局移管、他都道府県からの復興支援、県立高校改革による統合と特色化)の解決に、壁にぶつかりながら進んでまいりました。
これからも新たな課題は生まれてくることと思います。そのような中にあっても、本県ならではの児童生徒一人ひとりを大切にする教育が、益々発展されますことを心より願っております。
(執筆:前 福島県立福島高等学校長 佐藤 弘樹(さとう ひろき))
※佐藤 弘樹先生は、2022年度文部科学大臣表彰を受賞されました。