ふくしま教育通信 2023年8月号 日々の思い「『絵本のよろこび』を読んで、読み聞かせするようになりました」 福利課長 市川 新吾
昨年の前回(うつくしま教育通信Vol.219)に引き続き、私のこれまでの読書歴で “三大ハマった本” シリーズの第2段、『絵本のよろこび』(著者:松居直、発行所:NHK出版、発行年:2003年)をご紹介します。
この本は、「NHK人間講座」において2002年12月〜2003年1月に放送された『絵本のよろこび』のテキストをもとに加筆、作成されたもので、番組講師で著者の松居直さんは、福音館書店の創業に参画し、編集長、編集部長、社長、会長、相談役を務められた方と紹介されています。
番組放送当時、子どもが3歳と1歳だったこともあり、本屋に陳列されていたテキストが目にとまって、買って読むと同時に番組を見たのがハマったきっかけでした。
それ以来、毎月給料日に「今月の一冊~」と言いながらそれぞれに一冊ずつ絵本を買って帰り、いつの間にか「えほんよんで!」とせがまなくなった小学3~4年生?頃まで、毎日のように私か妻が寝る前に読んで聞かせるようになりました。
なぜ絵本を読んであげようと思うようになったのか。それは、この本から「どんなに下手でも “共に居る” 者の肉声で語りかけることが、愛情を注ぐことにつながる」と理解し、これが読み聞かせの神髄と自分なりに解釈したからです。
そこで、CDやビデオ(当時)・DVDで綺麗なプロの語りを聞かせるのではなく、どんなにガラガラ声でも、つっかえても、眠くて呂律が回らず「寝ちゃだーめー」と怒られても、そばに居る自分たちの肉声で読み聞かせました。その甲斐あってか、大きくなった子どもたちはこれといった抵抗もなく自然に活字に親しむようになったと思います。そして何よりも、子どもたちが「読んでもらった絵本」と「読んでもらったこと」を今でもしっかり覚えていてくれました。
この経験から、姪っ子が生まれたり、職場の仲間にお子さんが生まれたりした時に、出産祝いとして数冊の絵本とこの本を贈り、ささやかながら読み聞かせの普及活動をしています。興味が湧いてきたという方は、是非ご覧になってみてください。ほかにもたくさん、個々の絵本が持つ力と素晴らしさが書かれています。(ちなみに、『スイミー』が、皆で力を合わせれば大きなことを成せるという話ではなく、自己認識を深めていく自分探しの話だったということも、番組を見て、この本を読んで初めて分かりました。)
私もこの原稿を書いていて、就寝前に読んで聞かせていた当時の様子が次々に思い出されます。
ゲラゲラと笑う声、一言一句間違えずに復唱する言葉、集中して絵に注がれる眼差し、とても生き生きした表情をしていて、正直しんどいなあと思いながらも喜ぶ姿を励みにページをめくっていました。
そして、重たい瞼の目を懸命に見開き、遠のく意識を必死に引きとどめて、やっとの思いで読み終えたあと、愛情を注がれたことを確証できる涙の一言が返ってくるのです。
「もっかい。」(訳:もういっかい)
(執筆:福利課長 市川 新吾(いちかわ しんご))
※市川課長の前回(昨年)の “三大ハマった本” の一つ、『“弁当の日”がやってきた』については、「うつくしま教育通信Vol.219(2022.8.22配信)」に掲載しています。ぜひ下記からご覧ください。