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【開催報告】進路で悩む前に聴いてほしい話 X-TALK福島明成高校を開催しました!

 県北地方振興局では、管内の高校に出向き、地元で働くゲストと高校生との座談会を開催しています。今回は令和6年12月20日に福島市の福島明成高校で開催した座談会の様子を一部紹介します。当日はファシリテーターに東邦銀行の木村信綱さん、ゲストに現役で農業に携わっている福島市の有限会社まるせい果樹園農場責任者・佐藤優(ゆう)さん、本宮市の伊藤農園・伊藤広明さんの2人をお迎えして、高校生15人が進路や働くことの意味、働く人たちの本音、仕事に就いたきっかけなどについて聴きました。

1 高校生の頃は農業をどう思っていた?

 佐藤さんも伊藤さんも実家が農家で後を継いでいます。二人とも高校は普通科でしたが、当時、家業である農業についてどのように思っていたのでしょうか。

佐藤さん)高校時代は後を継ごうとはあまり思っていなかったです。農業の繁忙期はどうしても朝が早く、泥臭いのも嫌でした。でも、そのことは親には言えませんでした。

伊藤さん)私は中学生ぐらいの頃から漠然と「農業をやろうかな」と思っていました。私は3兄弟の真ん中ですが、宮城県の農業短大に進学する時に「自分がやる」と言って、後を継ぐことになりました。

 ゲストのお2人には、農業に対する高校時代の想いについて語っていただきました。その後、就農するまでの経緯はどうだったのでしょうか。

佐藤さん)高校卒業後は栃木県の大学で経営やITについて学びました。この頃に将来家に戻って後を継ぐことを考え始めました。ただ、サラリーマンにも憧れがあり、親と約束して、3年間は会社員として働くことにしました。コロナ禍を機に2年で福島に戻ってきましたが、大学で勉強した経営やIT、簿記の知識は、農園の経営に役立っています。

伊藤さん)農業短大で農業の基礎を学んだ後、福島県農業総合センターで1年程度、臨時職員として働きました。何か勉強になればという気持ちとともに、自分の収入にもなります。実家の農園は、両親の収入分のみの規模で経営していたため、いきなり私の分の給料を増やすのは大変です。そのため、農場の規模を大きくする準備を進め、新しくアスパラガスを始めることにしました。

ゲストのお2人のお話を熱心に聴く生徒の皆さん

2 普段どのような仕事をしているの?

 普段の仕事の内容について教えてもらいました。

佐藤さん)忙しい時期は朝5時半から始まります。桃がメインなのですが、収穫の時期は朝から夕方までずっと収穫しています。うちは栽培部門と販売部門に分かれていて、この時期は栽培部門が収穫、販売部門が販売、発送に徹しています。収穫した桃はJAなどに卸さず、すべて自社販売を行っているため、値段も自分たちで考えます。責任は重いですが、自社ブランドとしての価値が上がります。自分たちが頑張った結果が見えるので面白いです。

伊藤さん)私が始めたアスパラガスは、収穫後はJAの直売所やヨークベニマルに卸しています。売上の2、3割は販売手数料として差し引かれ、残りが手元に入ります。消費者は生産者の名前を見て購入しているので、長く続けていくと名前を知ってもらえるようになり、売り上げもあがってくることで手応えを感じます。

座談会の途中には周りの人と相談する時間もあります

3 農業の大変なところは?

 ここまでお2人から農業に係る仕事の内容を伺ってきましたが、農業ならではの大変さはどのようなところでしょうか。

佐藤さん)観光果樹園なので、お客さんは基本的に土・日・祝日に来ます。繁忙期は友だちと休みが合わないので、旅行などに誘われても行けません。(夏の土日なんて絶対に出かけることができません。)

伊藤さん)現在の農業環境は先が見通せないところがあります。就農している人の平均年齢が高く、今後、農家は加速度的に減っていくと思います。大規模な農業が難しい中山間地の農地の維持・工夫など、農業を続けていく環境について、仲間と話し合っているところです。

佐藤さん)私の周りの農家は70歳を超えている方が多く、一番若いのが私です。生産者が減ると流通量も減少し、「福島の桃」というブランド力が下がる可能性があります。

教頭先生からもお話を伺うことができました

4 先輩に質問!

生徒A)僕は来年から農業を始めようと思っています。伊藤さんはどうしてアスパラガスを始めたのですか。

伊藤さん)新規就農者向けの国の補助金制度があり、JAの職員に勧められて始めました。

生徒B)お2人の農場ではスマート農業を取り入れていますか。

佐藤さん)うちではリンゴ、ブドウ、桃を特に省力化するように心がけていて、ロボット草刈り機を導入しました。草刈りの分の時間を人の手でしかできない別な仕事に当てることができます。

生徒C)祖父が花の栽培をしています。最近暑すぎてうまく収穫できないと苦しんでいますが、天候についてどのように対策していますか。

佐藤さん)果樹では特にリンゴが影響を受けていて、高温になると色がつかず、蜜入りもしないと言われています。打開策は高温に強い新品種に変えることです。高温障害については、南の地域から影響を受けるので、福島は影響を受けた地域で効果があった対策を参考にすることができます。

伊藤さん)今年は9月にコシヒカリの刈り取りができました。普通は10月ですから、明らかに早すぎます。その結果、未熟米が多く、収穫量もそれほど多くありませんでした。品種を変える方向を模索するしかないのかもしれません。

参加した生徒さんは積極的に手を挙げて質問していました

5 将来に向けてのアドバイス

 ゲストのお2人から若いうちにやっておいた方がよいこと、勉強しておいた方がよいことを伺いました。

佐藤さん)自分がやりたいことは、可能な限りやってみると良いと思います。僕は留学したかったのですが、我慢してしまい、ちょっと後悔しています。

伊藤さん)農業は自分の家で全部済んでしまうため、人と関わらずに済みます。ただそれは、あまり良くないと思います。大人になると農業団体や農業関係者の集まりなども含めて、いろいろな世代の人たちとコミュニケーションを取ることが求められます。ぜひ、いろいろな人と話してコミュニケーションをとってください。

座談会終了後、ゲストのお2人に質問する光景も見られました

 進路や就職について考える時期は、人生の一大転機です。大人はみなさんたちの助けになりたいと思っています。先生だけじゃなく、近くにいる大人は質問されたら、優しく教えてくれるはずです。皆さんに必要なのは、怖がらずに質問することです。ぜひ、いろいろな話を聞くことで進路選択の幅を広げてください。

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