ふくしま教育通信 2023年10月号 日々の思い「武隈神社(天栄村)のお葉付イチョウ」 文化財課長 平山 茂樹
酷暑の夏もやっと終わり、秋の訪れとともに通勤途中にあるイチョウの木にも銀杏がなりはじめました。
9月下旬の今、路上にはわずかばかりの黄色い銀杏の実が見られますが、道路が熟した銀杏の実で独特な匂いを放つのは、まだ先になりそうです。
中学生の頃、学校までの坂道に銀杏が道沿いに植えられていて、お昼の休憩時間に担任の先生から銀杏拾いに誘われ、匂いを我慢して、バケツ一杯ほどの銀杏を拾いました。しかしながら、その後先生から銀杏をもらうといった見返りはありませんでした。
中学時代の苦い思い出の一つです。
ところで皆さんは、天栄村の武隈(たけくま)神社のお葉付イチョウというものをご存知でしょうか。
これは葉の先に実がなる珍しいイチョウの変異の一種で、全国に20本ほどしかなく、県の「緑の文化財」にも指定されています。
この木は、樹齢推定350年以上の大木で、イチョウは雄株と雌株が異なり、雌株に実がなるのが通常ですが、このお葉付イチョウは葉に実がなるという非常に珍しいものです。
イチョウという木は「公孫樹」ともいい、元来中国が原産地ですが、朝ドラの主人公のモデルである牧野富太郎が、「世界へ見せびらかすに足る一つである。」と言っているように、日本にとって象徴的な木であるといえます。
また、この神社の裏山には幾度の戦いでも落城しなかったという不落の名城「牛ヶ城」があります。
福島からですと、高速を利用して1時間ちょっとで着きますので、葉の先に銀杏がなる様子を見に、是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。
(執筆:文化財課長 平山 茂樹(ひらやま しげき))