2024年10月号 編集後記 未知の生成AIとの付き合い 教育総務課長 柾木 渉
最近、高校生の学びの成果報告会などを拝見して、驚くことがあります。高校生がICTにとても順応しており、パワーポイントを活用して大人顔負けのプレゼンテーション資料を作成し、論理立てて話している姿に、いつも驚かされます。
自分の高校生の頃を思い返しても、スライドを作成してプレゼンテーションをしていた記憶はありません。。。自分が高校を卒業してから15年以上が経過しますが、学びの様子の変化と生徒たちの堂々としたプレゼンテーションに驚嘆するとともに、学びのツールも大きく変化していくことに、追いついていかねばと思う次第です。
●学習指導要領の改訂
直近では、平成30年度以降、各校種で順次学習指導要領が改訂されました。
変動的で不確実な世の中は、4つの英単語の頭文字からVUCA(ブーカ)時代と呼ばれています。このような世の中を生き抜くためには、一問一答の能力のみならず、課題を発見し、他者とも協力しながら解決へ向かえるような資質・能力が求められています。今般の学習指導要領の改訂において、育成する資質・能力として示されたのは、下図の「知識及び技能」、「思考力、判断力、表現力など」、「学びに向かう力、人間性など」です。
また、このような資質・能力を育成するため、教育活動には、以下のような考え方が求められています。主体的で対話的である学びを進めるためには、教師からの一斉教授型の授業形式では、現在求められている資質・能力を育成するには十分ではありません。
児童生徒が主体的に考える時間が担保され、他者との対話・協働が行われることで、学びが深まっていきます。
●また次の学びへ~次期学習指導要領改訂~
一方で、学習指導要領がおよそ10年スパンで改訂されていることを踏まえると、既に次期改訂への折り返し地点に来ているとも言えます。
現在、文部科学省では、今般の学習指導要領の改訂による振り返りと今後の方向性についての議論が行われています。
(↑↑↑ 文部科学省 令和6年9月18日 ↑↑↑)
会議資料の中では、「これからの社会像」という項目の中で、「持続可能な社会づくり」や「一人ひとりのウェルビーイングの実現」などが記載されており、加えて、ここ数年でよく耳にするようになった「生成AIの活用」についても随所に記載されています。これから仕事や教育現場に生成AIがどのように入り込んでくるのか、注視すべき事項となっています。
●生成AIは便利?恐れるもの?
生成AIが教育現場に取り込まれることで、どのようなことが期待されるのでしょうか。たとえば、以下のような観点が考えられます。
上記★枠内の文章は、3秒で書き上げたものです。正しく言えば、私が書いたものではなく、AIに「今後、学校現場でAIがどのように活用されるか教えて」と投げかけて生成された回答(Geminiより生成。原文ママ、一部体裁修正。)です。概ね、想定されるような内容が網羅されて記載されていますが、現在のAIの能力では、オンライン上のビッグデータを元にこのような回答を数秒で作成することが可能です。
このような生成AIの現状の機能を踏まえ、情報処理・活用能力の重要性を認識しつつも、留意していかなければならないこともあります。前述の会議資料では、続けて以下のように記載されています。
あくまで、AIは既存の情報を整理し、そこからたたき台を生成するツールに過ぎません。生成AIにより出力されたものを精査し、課題をクリアにしたり、目的に沿って作り上げていったりする力が求められていくのです。
なお、生成AIコンテンツによっては、全く事実無根の内容が生成されることもあります。そのため、あくまでこうしたコンテンツは学びや仕事の支援ツールとして捉えつつ、生成AIの活用においては、やはり内容を吟味したりそれを活用したりする能力が求められることは言うまでもありません。
●食わず嫌い
7月に、「変化を受容する」ことについて書きましたが、生成AIのような未知のコンテンツに飛び込んでみることで、その良し悪しに触れ、もしかするとその機会が、私たちの環境をよくする契機になるかもしれません。
こうした目まぐるしい社会の変化も、ネガティブな言葉ばかりで捉えるのではなく、楽しんで需要していかねばと思います。(生成AIについては無料コンテンツもありますので、情報の受け取り方には留意しながら皆様もぜひ一度使ってみてください。)