ふくしま教育通信 2023年11月号 リレーエッセイ「効果の程はいかばかりか」 福島県教育委員会委員 成澤 勝蔵
長く暑い夏、短い秋も終わり今年もあと一か月ほどになってしまいました。主な運動部、文化部の大会もほぼ終わり、満足のいく結果を残せた部もあれば、もっと努力をすればよかったと後悔したり悔しかったりしたこと、負けたけど身体的、精神的な成長がみられてよかったことなど、様々な思いがあったのではないでしょうか。また、受験生にとってはラストスパートの時期にもなってきました。
親や教員にとって子どもの成長を願わない人はいないと思いますが、期待はしているでしょうか? 皆さんは「ピグマリオン効果」という言葉を聞いたことがありますか。アメリカの教育心理学者であるローゼンタール氏が実験をおこなった結果を基に提唱し「ローゼンタール効果」とも呼ばれています。ピグマリオン効果とは、他者からの期待により、仕事や学習などの能力が通常よりも向上する効果のことをいいます。逆に、相手に対して期待できない、見込みがないと思っていると、本当にその通りの悪い結果になってしまうという効果のことを「ゴーレム効果」というそうです。自分がゴーレム効果に陥らないために、疲労しているときは休息をとり、自己肯定感を高めて自分に合った目標を設定し、自分に期待するのが大切だそうです。また、他者をゴーレム効果に陥らせないために、ネガティブな評価ばかりでなく良いところを見つけ褒めることが大事であり、失敗したときは真意がわかるように説明し、コミュニケーションを図るなどして挽回のチャンスを与えてみるのもよいと思います。
子どもそれぞれに個性があり、教え方も画一的な同じものではなく個々にあった教育が必要になっています。また、子ども自ら考え、アドバイスを受けながら解決策を見つけられるように導くことも必要ではないでしょうか。そこに期待が加わればよりよい成長になるかと思います。もっと早くこのことを知っていれば、私の子育ても違ったものになったのかと思うと少し残念です。
(執筆:福島県教育委員会委員 成澤 勝蔵(なりさわ しょうぞう))