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「教育」をテーマに探究している福島県立安積高等学校の高校生が大沼教育長の前で発表!!(その2)

 「総合的な探究の時間」で、「教育」をテーマに探究活動を行っているという福島県立安積高等学校の1年生。今回はどのような発表だったのかご紹介します!!

1 安積高校生、いざ発表!

 発表に来てくれた安積高校生は2名ですが、グループで「教育」をテーマに探究しています。「教育の格差」や「学力向上の取組」など、教育に関することについて調べ、7月には福島県教育委員会の教育施策について話を伺いたいと教育庁を訪問(物怖じしないでアポイントを取って行動する高校生、ステキです)。教育という視点から、福島県の現在と未来について考えている高校生。福島県の教育の課題にどのように向き合い、探究しているのでしょうか。

 私たちは、探究のテーマを「学びの本質を探り、福島県の学びの在り方を考え、学力向上につなげること」としました。そこで次のことを調べることで探究を深めています。
1 全国学力・学習状況調査の福島県と全国との比較から分かったこと
 ・問題の本質を理解していないのではないか
 ・知識のままで実践的に使うことにまで至っていないのではないか
2 福島県教育委員会の教育施策(7月の訪問で聞いたこと)
 ・学びの変革の推進
 (個別最適化された学び、協働的な学び、探究的な学び)
 ・自分の人生を切り拓くたくましさを持てるようにすること
 ・一人一人の幸せと社会全体の幸せというwell-beingの考え方
 ・ふくしま幼児教育研修センターの設置 →そこで幼児教育にも着目
3 幼児教育の重要性
 ・安全な環境で活動させ、言語・身体・社会性の発達を促すことが重要

安積高校生の発表より(一部抜粋)
福島県の教育の課題は、大学への進学率や難関大学への合格率が低いこと、児童生徒の学力が低いことだと感じています、と話す高校生。


 福島県の教育施策の柱としている「学びの変革」では、探究的な学びを大切にしています。そこで安積高校生も「探究的な学びが、自分たちの能力を高めるためにどのような効果があるのか興味を持った」とのこと。そこで、自校の1年生を対象に探究活動に関するアンケートを実施したそうです。

 「探究的な学びにはどのような効果があるのか」を調べるため、「総合的な探究の時間をどのように感じているのか」について3つのアンケートを実施しました(1と2は5段階評価)。
1 探究活動は楽しいですか?
 ・楽しい38%、普通35%、楽しくない26%
2 探究活動は将来自分の役に立つと思いますか?
 ・役に立つ62%、普通22%、役に立たない16%
3 探究活動で何を得ましたか?
 ・調べ、生かすこと
 ・協力すること
 ・役立つスキルを身に付けること

 アンケートから、探究活動を楽しいと感じていなくても、自分の将来に役に立つと考えている人が多いことから、探究活動は将来に役に立つ能力を培う活動になっている、と感じました。

安積高校生の発表から(一部抜粋)
アンケート結果をグラフで提示。子どもたち自身の学習への取り組み方をはじめ、各学校や家庭環境など子どもたちの学力をめぐるさまざまな要因についても考察していきたい、と語る高校生。


 安積高校には、学びの本質について生徒自らが考える「開拓者の時間」というものがあるそうです。その中で、「目の前の具体について学ぶだけでなく、具体を抽象化・概念化して次の具体に応用できる学びが大切である」、というものがあったそうです。
 高校生から発表の最後に、「このような学びを実現するためにも、普段の授業の中で、1人1台端末を有効活用することで個別最適化された学びにつなげていくこと、そして協働的な学びや探究的な学びを増やしていくことが必要なのでは」とありました。


2 大沼教育長への取材!?

 高校生から大沼教育長に2つ質問がありました。どのような質問で、大沼教育長はどのように答えたのでしょうか、一部をご紹介します。

Q高校生より
 幼児教育は人間性、情緒性、学力の土台作りであるため、幼児の色々な感覚を養うことが大切だと考えていますが、現在、福島県ではどのような取組がされていますか?
A大沼教育長より
 学びに向かう基礎の部分を作るのが幼児期。子どもは自分で興味のあることにアクセスしていくので、「安全な環境で存分に活動させる」ことで、人間関係の中で作られる情動的な部分や非認知能力を育むことが大切です。
 福島県には、保育所、こども園、幼稚園が公立・私立合わせて600以上もあります。子どもへのアプローチの仕方はそれぞれ異なりますが、小学校はほとんどが公立。そこで幼児教育を担う方の指導力を充実させ、小学校の教員とのコミュニケーションをより一層進めることで、小学校との接続を強くしていこうと、「ふくしま幼児教育支援センター」を作りました。

Q高校生より
 現在、学校では協働的、探究的な学びとして探究活動が授業で行われていますが、現時点での効果や改善点はありますか?
A大沼教育長より
 世の中には、正解がない課題がたくさんあります。だからこそ単なる知識のアウトプットだけでなく、色々な個性を持った人たちと議論したり協働したりしながら解決に向けて取り組むことが大切です。福島県では、震災後は特に探究活動を重視して、県全体で高校生を中心に探究活動に取り組んでいます。その成果が色々な所で現れてきていて、地域の方を巻き込んだ地域活性化など、高校生のパワーが地域で生かされてきています。
 改善点としては、探究活動には多くの方の協力が不可欠なので、そのような方を皆さん自身が巻き込んでいってもいいかもしれない。
 そして、探究活動は学力向上に結び付くかどうかですが、これは難しい。探究活動は、さまざまな教科の基本的な知識を繋げ、さらには「実践」に繋げているのではと思います。STEAM教育もまさにそうです。大学進学率との関係性は一概には言えないけれど、さまざまな社会課題にどうアプローチしたらいいのか、教科の学びと繋げることが探究学習の本質だと思います。

「福島県の子どもたちの力、学力とは何だと思う?」と高校生に問いかける大沼教育長。「学力とは、知識・技能だけではなく、思考力・判断力・表現力、学びに向かう力・人間性なども実は学力に入っています。皆さんも、毎日の教科の勉強が社会や自分の関心とどのように結びついてるのかなと考えながら学んでいくと、教科の学習はもっともっと面白くなるのでは」と大沼教育長。


3 大沼教育長からの講評

 高校生も大沼教育長も「教育」に対する思いがあふれて、予定時間を大幅に延長した今回の発表。最後に大沼教育長からエールが送られました。

 探究活動に関する調査はとても貴重なデータです。探究活動が楽しくないと感じる高校生もいるようですが、これまで受け身的な授業スタイルが多かった中で、友達と議論したり役割分担したりすることがしんどいと思うのかもしれません。しかしその一方で、探究活動で何を得ましたかという質問に「役立つスキルを身に付ける」と肯定的な評価が多い点は、大切です。
 素晴らしい発表をありがとうございました。県内の先生方にも聞いて欲しい発表だなと思いました。今回の発表が最終形ではないから、もっとブラッシュアップして、良いレポートになっていくのだろうなと期待しています。

「幼児教育と高校の探究活動は別物ではなく根っこは同じです。他者と協働して行う力など、探究活動で得た学びは、皆さんの将来の色んなスキルとして、社会で役立ちます」と大沼教育長。


 福島県の県立高校では、探究活動が盛んに行われています。その様子は「ふくしま高校生社会貢献活動コンテスト」からもうかがい知ることができます。令和5年度は、「石焼き芋」で地域おこしなど、ユニークな探究活動が満載。ぜひ下の記事もご覧ください。


 発表の最後に、安積高校生がこのように語りました。
 「日々の授業のすべてが探究的なものとなり、子どもたち一人一人が学びとは自分自身のものであるということを実感することが、学力の向上につながるはずです」

 安積高校の皆さん、探究活動の発表ありがとうございました。これからも「福島のよりよい教育」に向けての探究を深めていってください!!



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