ふくしま教育通信2024年11月号編集後記 高校生の夢~影響を与えるものは~ 教育総務課長 柾木 渉
今の高校生は、どのような夢を描いているのでしょうか。
高校生が将来なりたい職業、そしてもう少し広義の将来の夢についての調査結果があります。(調査対象地域は全国ですが、オンラインのリサーチ会社のモニター会員(高校生)を対象にしているので、回答者の属性に多少偏りはあるかもしれません。)
男女ともに将来なりたい職業の上位に公務員が来ているのは、ここ数年変わらない傾向ですが、男子高校生の1位が「ITエンジニア・プログラマー(12.5%)」となっています。男子高校生の上位10項目のうち、「ITエンジニア・プログラマー」に加え、「YouTuberなどの動画投稿者(10.5%)」、「ゲームクリエイター(8.5%)」、「ゲーム実況者(6.5%)」といったネットに関わる項目が上位を占めていました。また、「ゲーム実況者」を除いた上記3項目については、前年2023年比でいずれも順位・回答割合ともに上昇していました。
(他には「教師・教員(7.0%)」や「ものづくりエンジニア(6.8%)」などの回答もあります。)
加えて、もう少し広義の「将来の夢」については、以下のような回答が示されていました。
「素敵な相手と恋愛・結婚する」、「お金持ちになる」、「あたたかい家庭を築く」など、10以上の項目がある中で、上位3項目は男女共通して、「①安定した毎日を送る」、「②好きなことを仕事にする」、「③趣味を充実させて生きる」の3項目でした。「ワーク(仕事)」より「ライフ(生活)」に係る回答が多いですが、ほかに仕事に係る回答として、「社会や人の役に立つ仕事をする」は男女ともに30%程度と低位の回答でした。
●まずは「好きなこと」「関心のあること」から
先日、橘高等学校にお招きいただき、高校1年生のキャリアガイダンスにてお話をさせていただきました。
高校1年生は高校受験が終了してまだ半年ほどですが、高校生活の1/6が終了し、文理選択等、随所で進路選択の機会を迎えています。そこで、「自分が何に関心があるのか(ありそうか)」に向き合う時間があっても良いのではと思い、ガイダンス当日は、私が高校1年生当時に進路選択をどのように考えていたかについて話すとともに、「自分の好きなこと、関心のあること」を書き出してみようという時間を設けました。
私も当時の進路選択は全く具体化されていませんでしたが、高校1年生期はそういうものだし、それでもいいという話をした上で、当時職業を全く知らなかった私から、自戒の念を込めて、以下のようなことを伝えさせていただきました。
●私の今のキャリア
・当時考えていた職業には就いていないけれども、関心としては近しい職業に就いた。
・今の職業を選ぶまでに、「自分は世の中の職業を知らない」ことに気付き、自分の関心事項に向き合い、仕事について調べるタイミングがやってきた。調べていく中で、今の職業に辿り着いた。
●進路選択のきっかけをつくる
・(特に進路選択が定まっていない方は、)まずはいろんなことに手を出してみること、知ること。
・そして自分の関心に基づき、関連しそうな仕事が何かを調べてみること。
●進路選択への保護者の関わり
進路選択については、個人が自分自身の気持ちと向き合うことが重要である一方で、高校生の進路選択に保護者が寄与しているという点も着目しなければなりません。
高校生を対象にした進路選択に影響を与えた人(もの)に関する調査では、「親(保護者)」が最も多く、「インターネットやSNS」、「学校の先生」という項目が続きます(複数回答可。続いて「友達」「きょうだい」等の項目あり)。
たとえば、保護者の職業や、保護者に勧められた習い事、家族で出かけた先で出会ったものによって、進路選択へ影響を受けるかもしれません。進路選択のきっかけを得るタイミングは人それぞれです。
同調査では他国との比較調査も提示されており、日本の高校生は、将来希望する職業を「はっきり決めている」割合が最も多く、同時に「まだ考えていない」割合も最も多く、二極化傾向にあります。
進路形成を促していくためには、家庭や学校で、たくさんの経験をすること、職業を知ること、などの外発的動機付け、そして子供たちの内発的な「好きなこと・得意なこと・優先したいこと」について対話をすること、といった働きかけが必要になるのだろうと思います。
●今の関心が一生の関心事項ではない
加えて、橘高校のキャリアガイダンスでは、最後に以下スライドを提示しました。
私が説明したかったのは、健康寿命が延び、「人生」が長くなってきている、働ける期間も長くなってきている、ということではありません。
・高校・大学卒業後に就く仕事で生涯働き続けるわけではない、人生長いのだから、関心事項も変わってくるだろうし、職を変えることもあり得る。
・だから、まずはやってみたいこと・関心があることなど、「身近なことから進路選択のきっかけを探してみてはどう?」ぐらいで考え出してみるといい、ということです。
子どもも私たち大人も、自身の自己実現やwell-beingのためには、身を置く環境を考え続けて、選択していけば良いのだろうと思います。
福島県教育総務課長 柾木 渉