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2024年9月号 編集後記              アンテナを強化する夏休み明け                       教育総務課長 柾木 渉


 これまで、多くの方々にnoteの記事をお書きいただきました。学校のこと、私生活のこと、ハッとさせられる内容がたくさんありましたが、前月に配信した会津若松市立荒舘小学校の鈴木基之校長先生の記事もまた、子どもたちと接する際の視点・姿勢を改めて考えさせられる内容であり、多くの♥が付されていました。

「ふくしま教育通信2024年8月号」より

 前回のふくしま教育通信(※)では、令和5年度教育者表彰(文部科学大臣表彰)受賞の鈴木校長先生に、「決して忘れてはならない人」というタイトルで過去のご経験を記事にしていただきました。赤裸々に書かれた記事の一節は、目の前の子どもたちにどのように向き合っていくか、改めて考えさせられるような内容でした。

「私は、口も手も出し過ぎていた 音声をほとんど使わないその人のことをよく理解できてもいないのに、さも、代弁者のように振る舞い、誘導し、自己満足に終始し、全くその人の役には立っていなかった」

(記事より抜粋。ぜひリンクより全体を通してお読みください。)

※ふくしま教育通信とは
 学校・教育関係者等へ記事をお寄せいただき、月に一度配信しているもの。下記ページよりアドレス登録をしておくと、ふくしま教育通信の配信メールが届くようになります。

●こどもたちの変化の多い夏休み/夏休み明け


 5月の編集後記において、「表現が苦手な高校生」という内容を掲載しました。子どもたちの悩みはなかなか表出しないこともあり、つかみきれない場合があります。
 3学期制の学校では、夏休みが明けて始業式も終わり、2学期がスタートした頃かと思います。2学期の始めは、児童生徒に変化の多い時期とも言われており、家庭や学校、地域では、子どもたちの変化に目を向けていく必要があります。

 8月末、神奈川県の商業ビルから女子高校生が転落するという傷ましいニュースが報じられました。真相は不明ですが、一部報道では、「飛び降り自殺の可能性が高い」とされています。ここ数年、児童生徒の自殺者数は、年間約500人と高止まりしています。以下は、子どもたちの自死に関する日別データです。

掲載元)令和6年7月12日児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)

 コロナ禍を経て、この傾向には近年変化も見られていますが、9月上旬や4月上旬、次いでゴールデンウィーク明けといった長期休業明けの時期に児童生徒の自死が急増していることがわかります。

●TALKの原則


 文部科学省が作成した「教師が知っておきたい 子どもの自殺予防」には、悩みを抱え、SOSを発している(発したい)児童生徒への対応として、「TALKの原則」というものが示されています。

出典)教師が知っておきたい子どもの自殺予防

 希死念慮を抱えた子どもへの対応のみならず、悩みや不安を抱える児童生徒への対応の基本姿勢として通じるものはあるかと思いますが、当該児童生徒に対しては、
 ・まずは、心配していることを伝え(Tell)、
 ・特に希死念慮があると見受けられる場合には、その気持ちを率直に尋ね
  (ask)、

 ・その上で絶望的な気持ちを傾聴し(Listen)、
 ・目の届く範囲で安全を確保してあげる(Keep Safe)
というような対応が求められます。
 救いを求める声を発しようとしている児童生徒に対して、傾聴なくして「大丈夫!頑張れば元気になるよ!」などと声をかけることは、せっかく開き始めた心を再び閉ざすことになりかねません。

●変化を見る


 危機感を共有するためにも、自死という事案を取り上げましたが、同手引きでは、子どもたちの変化のサインとして、以下のような内容が示されています。
 ▶ これまでに関心のあった事柄に対して興味を失う
 ▶ 投げやりな態度が目立つ。
 ▶ 成績が急に落ちる
 ▶ 不眠、食欲不振、体重減少などのさまざまな身体の不調を訴える。
 ▶ 友人との交際をやめて、引きこもりがちになる。
など

 日々子どもたちに接し児童生徒理解に長けている教職員の気付きは、子どもたちの機微な心の変化を捉えるきっかけになることには違いありません。
一方で、教員は教育のスペシャリストですが、心のケアの専門家ではありません。そのため、行政機関にはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、福祉の側面での整備を徹底していくことが求められ、家庭・学校・関係機関等が一体となって子どもたちのSOSをキャッチしていく網目を張り巡らせていくことが重要になります。

●相談窓口


 子どもたちの悩みの相談先は様々です、日々接する周囲の大人のみならず、電話や各学校等から案内されているSNS相談窓口などがあります。相談のしやすさは、個人や相手との関係性によって様々です。子どもたちには、保護者や友人、教職員や習い事の先生、行政機関の相談窓口など、多様な選択肢があることを認識してもらい、選択してもらえるようにすることが重要であり、大人もまた、特定の相談先にばかり拘るのではなく、こうした複数の選択肢に頼ってよいということを認識しておく必要があるかと思います。

教育相談窓口:子どものための24時間電話相談「ふくしま24時間子どもSOS」など