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探究学習に役立つ調べものガイド(入門編)③インターネット検索で気をつけたいこと

この記事のまとめ

・インターネット上のコンテンツはなんでも自由に使えるわけではない。自分の発表に責任を持つためには、著作権に注意し適切に「引用」することが重要
・特にインターネット検索では誰が書いたかわからないようなページもある。信頼性や新しさなど書いてある内容を評価し、出てきた情報も必ず「ウラ」を取ることが必要


はじめに

 探究学習では、テーマ設定から発表まで様々な場面で「調べもの」をします。福島県立図書館は、探究学習を含め、様々な調べものを手助けしています。この記事では、主に高校生に向けた調べもののお役立ちポイントを紹介します。
 
各回のリンクはこちら
 ①探究学習の進め方・調べる方法
 ②インターネット検索のコツ
 ③インターネット検索で気をつけたいこと (この記事)
 ④図書館活用のススメ

今回は、インターネット検索で気を付けたいポイントを紹介します。

インターネット検索で気をつけたいこと

 インターネット検索は調べものには欠かせないですが、便利だからこそ様々なトラブルの原因にもなります。ここでは特に気をつけてほしいところとして、「著作権」と「内容の信頼性」を取り上げます。

著作権に注意!

 皆さんが探究学習でまとめたレポートを読んでいると、ときどき(インターネットにあった内容をそのまま写したのかな?)と思う文章を目にします。もしかして「このページにいいことが書いてあるから、コピペしてレポートを出そう」とか考えていませんか? もしそんな人がいたら、その考えはすぐに改めてください!
 インターネット上のコンテンツはなんでも自由に使えるわけではありません。なぜなら、「著作権法」という法律で守られているからです。細かく説明すると難しいですが、基本的に他人のコンテンツ(文章や画像・動画)を自分のレポートや発表で使うには、コンテンツを作った人の許可が必要になります。
 「じゃあ、発表ではいちいち作った人に許可を取らないと使えないの?」となりますが、そんなことはありません。いくつかの条件を満たせば、「引用」という形で他人のコンテンツを使うことができます(注1)。
 どうすればいいかは、実際に「引用」する形で説明します。著作権について取り扱うCRIC(公益社団法人著作権情報センター)では、著作物を自由に使える場合の一つとして、以下のように述べています。

(3)自分の著作物に他人の著作物を引用すること
たとえば、自分の論文の中にほかの人の論文の一部を引用 (自分の文章の中に、他人の文章など持ってきて説明に用いること) することができるという規定です。引用する場合は、以下のような条件があります。

・引用する「必然性(それ以外にありえない)」があること
・報道、批評、研究などの正当な目的であること
・自分の論文が中心で、引用する論文はその一部であるということがはっきりしていること
・引用した部分を「 」でくくるなど、自分の文と、引用した文とをはっきりと区別すること
・引用してきた論文の題名・著作者名・出版社名・引用した部分が掲載されているページ数などをしめすこと

公益財団法人著作権情報センター「みんなのための著作権教室」より(http://kids.cric.or.jp/intro/03.html、2024年12月1日確認)

 この例では、①引用の条件を正しく示すのに専門家の情報が必要②著作権の解説という目的③このnote記事全体に対して引用する範囲は少ない④枠で囲い、はっきり区別できるようにしている⑤掲載されているページやページ名、確認した日付を記載する ことで引用としての要件を満たすようにしています。特にインターネットでは公開した後に内容を書き換えることができるので、⑤では確認した日付を入れることも大切です。なお③はっきり区別する方法には「」でくくるなどもあり、引用の細かい方法や条件には発表方法や学問分野によって様々な違いがあります。「大丈夫かな?」と思ったら先生に事前に相談しましょう。

内容の信頼性は必ず確かめよう

 インターネット検索は非常に便利ですが、検索して出てきた結果を鵜呑みにしてはいけません。ページには誤った情報があることもあり、正しくても思わぬ落とし穴があることがあります。
 例えば、「福島県では図書館がいつできたのか」を調べるとしましょう。「福島県 図書館 できた年」といったキーワードをGoogleなどで検索すると、私のパソコンでは福島県立図書館のページがトップに出てきました。このページには「昭和4年10月14日 開館式」という項目があるので、福島県立図書館は昭和4年にできたと言って良さそうです。
https://www.library.fcs.ed.jp/index.php?page_id=370

 この内容自体はもちろん正しいのですが、よく見ると開館日の上に「昭和4年4月5日 福島市立図書館の図書ならびに器具の寄附採納」という項目があることに気づきましたか? 実は福島県立図書館は福島県で一番古い図書館ではなく、福島県立図書館より古い図書館がある(あった)のです。
 この項目にある「福島市立図書館」について調べてみましょう。同じ名前の「福島市立図書館」のホームページで図書館のことをまとめた「概要」を見てみます。
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/tosyo-kanri/kanko/toshokan/annai/documents/r5toshokangaiyou.pdf

 すると「明治41年9月15日 福島市立図書館(腰浜町)開設」(5ページ)という項目が見つかり、少なくとも「福島市立図書館」という図書館が福島県立図書館より前にあったことがわかります。つまり、「福島県立図書館」が昭和4年(1929年)にできたことは正しいですが、「福島県で図書館はいつできたのか」は少なくとも明治41年(1908年)より前なのです(注2)。

 検索して出てきた情報について「書いてある内容は本当に正しいのか」と考えることはとても大切ですし、インターネット検索に限らず常に必要です。特にインターネット検索では誰でもページを公開できるので、誰が書いたかはっきりしない無責任な書き込みのあるページも多いです。必要なのは、①書いてある内容を評価する②出てきた情報は必ず「ウラ」を取ることです。
①    書いてある内容を評価する
 インターネット検索で得られた情報は、そのままでは使えません。「その情報は信用できそうなのか」といった「評価」をして、はじめて自分にとって使える情報になります。
 情報の信頼性の見極めには様々な方法があります。特に慎重な判断が必要な病気やその治療に関する情報では、中山和弘・聖路加国際大学教授が信用できそうか判断するためのチェック法を提唱しています。これは、情報は以下の5点を確認しないと「かちもない」という考え方です。

か:書いたのは誰か、発信しているのは誰か?→信頼できる専門家または組織か、個人なら所属があやしいかも
ち:違う情報と比べたか?→他の多くの情報とは全く違うかも
も:元ネタ(根拠)は何か?→引用文献がなければ勝手に言っているだけかも
な:何のための情報か?→商業目的でしかないかも
い:いつの情報か?→古くて現在では違うかも

「インターネット上の保健医療情報の見方」『健康を決める力:ヘルスリテラシーを身につける』
(https://www.healthliteracy.jp/internet/post_10.html、2024年12月1日確認)

 特に見落としやすいのが、ページが作られた日付です。古いページの情報を使うと、書いた当時は正しくても今から見ると間違った情報になることがあります。
 また、内容が信用できても、例えば「英語で書かれた新型コロナウイルス感染症に関する医学論文」のように、自分で使うには難しいものもあります。

①    出てきた情報は必ず「ウラ」を取る
 検索して出てきた情報が信用できそうと思っても、使うためには「ウラ」を取る、つまり他のページを見て本当に正しいかを確かめる作業が必要です。いわゆる「フェイクニュース」のような悪意を持ったウソでなくても、誤字など単純な原因でも誤りは生じます。また先ほどの例でも分かるとおり「正しい」情報であっても、他のページを見ると思ってもいなかったような情報が得られることがあります。
 最近ではGoogle, Bingなど一部の検索エンジンでは検索結果にAIによる要約が表示されます。こうした機能は使い方によっては非常に便利ですが、事実と全く異なっていたり、不適切な内容を表示したりすることもあります。こうした機能を活用する場合でも「ウラ」を取る作業は必要です。
 
 探究学習では、インターネット検索・本などを使った学習は欠かせないものです。こうした情報を使って引用したり、図や表にまとめたりして発表すると思います。しかし、たとえ元ネタが他人の情報であったとしても間違った情報を使って発表した責任は、それを使ったあなたに生じます。ですから、インターネット検索で出てきた結果を使うときには情報が正しいか・調べ漏らしがないかなどをできるだけチェックしなければなりません。

 
次のページでは、図書館の活用法や、最後に大切なことを説明します。


注1 実は学校の学習ではもっと幅広い範囲で使うことができます(著作権法第35条「学校その他の教育機関における複製等」、第30条「私的使用のための複製」など)が、正しく引用することは学校に限らず研究・調査における基本的なルールですので、ここでは引用について詳しく説明しています。
注2 福島県立図書館は、元々あった旧・福島市立図書館の蔵書等を譲り受ける形で開館しました。この経緯は『福島県立図書館30年史 新館舎落成記念』福島県立図書館、1958年。に記載されています。今現在ある福島市立図書館は1985年に(再)開館したもので、福島県立図書館が現在地へ移転する前の建物を使っています。なお現在につながる公立図書館のうち、福島県内で最初に開館したのは1904年に開館した会津図書館(会津若松市)です。


(福島県立図書館)
https://www.library.fcs.ed.jp